インフラ再建、日本に期待=「震災復興経験を生かして」―侵攻抑止の核保有否定・駐日ウクライナ大使



ロシアの侵攻を受けるウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使(62)は22日までに、4月の離任を前にインタビューに応じた。日本の支援に謝意を示した上で、「震災復興経験を生かして大規模なインフラ再建事業に参加してほしい」と要請。停戦後を見据えた支援の継続を訴えた。また、武力侵攻の抑止力としてウクライナが核兵器を保有することは「解決策にならない」と否定的な見解を示した。

コルスンスキー氏は2020年に赴任。侵攻開始から約3年が経過し、各国に支援疲れが広がる中でも「日本人の約8割が一貫してウクライナの立場を支持している」と説明。昨年2月に東京で開かれた「日ウクライナ経済復興推進会議」を契機に、「想像をはるかに超える数の日本企業がウクライナでの事業に関心を示した」と感謝の言葉を述べた。

国際協力機構(JICA)や日本貿易振興機構(ジェトロ)などの協力で、仮設住宅建設や水処理を手掛ける日本企業がウクライナの現地を視察に訪れた。ウクライナで製品を現地生産する提案も企業から寄せられているという。

ウクライナは連日、ロシア軍のミサイルやドローン攻撃を受け、甚大な被害を受けている。コルスンスキー氏は「日本企業が危険を顧みず訪問してくれてうれしい」と述べるとともに、「安全確保が最優先で、それは可能だ」と強調した。日本との投資協定改定交渉も近くまとまる見通しで、両国企業の関係強化に強い期待を寄せた。

ウクライナの現状について「国民は極度に疲弊している。悪夢のようだ」と顔をしかめた。「ウクライナ以上に停戦を望む国はない」としつつも、「ロシアはあらゆる手段でウクライナの不安定化を図る」と警戒感を示した。

一方で、ロシア軍に対抗するためにウクライナが核兵器を保有しても「抑止力にならない」と明言した。日本が米国の核の傘の下にあるように、欧米の核保有国がウクライナに安全保障を提供することが、抑止力になり得ると指摘。停戦後の平和維持のため「強固な安保の確約が必要だ」として、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟の必要性を改めて訴えた。

ロシアが占領するウクライナ東、南部については「民主主義世界はロシアの占領を決して認めない」と語った。これらの地域が実質的にロシアの占領下で停戦したとしても「暫定的な扱い」とするべきだと強調。「力による現状変更」を認めれば、東アジアを含めた世界の安保体制に将来にわたって禍根を残すと警告した。



◇セルギー・コルスンスキー氏略歴

セルギー・コルスンスキー氏

キーウ(キエフ)出身。84年キーウ国立大卒。ウクライナ外務省経済局長、駐トルコ大使などを経て、20年4月に駐日大使に任命された。ロシアによる侵攻開始後、ウクライナ避難民の日本受け入れ対応など、両国関係の強化に尽力した。4月中旬に離任予定。62年8月生まれ、62歳。

【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに応じるウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使=18日、東京都港区 〔写真説明〕インタビューに応じるウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使=18日、東京都港区 〔写真説明〕インタビューに応じるウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使=18日、東京都港区

2025年02月22日 07時08分


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