補正予算見送り、政権迷走=「目玉ない」参院自民が不満―消費減税巡り対立激化も



トランプ米政権の高関税政策や物価高を受けた政府・与党の経済対策が迷走している。国民への現金給付を軸に、財源となる2025年度補正予算案の今国会提出を検討していたが、「バラマキ」批判が夏の参院選の足かせになると見るや、見送り方針に転換した。参院自民党を中心に、選挙の目玉政策に消費税減税を求める声はなお根強い。政権の混乱が長引く可能性もある。

「25年度予算も成立したばかりであり、補正予算、経済対策について検討している事実はない」。林芳正官房長官は16日の記者会見でこう述べた。15日夜には自民幹部が「関税の影響がどこまでか、まだ分からない。今国会に補正予算案は出さない」と明言した。

補正の今国会提出見送りは、参院選前の国民一律給付案の断念を意味するものだ。参院選での逆風を懸念する参院自民や公明党が消費税減税論を強めていることに対し、自民執行部がさらなる財政悪化への懸念から一時的な給付措置で対応する案を検討していた。森山裕幹事長は13日、財源の裏付けとなる補正予算案の今国会提出について「そうあるべきだ」と踏み込んだ。

その発言を聞いた首相周辺は「寝耳に水」と驚きを隠さなかった。衆院で与党が過半数を割り込む中、補正成立には野党の協力が必須。ただ立憲民主党や日本維新の会は「選挙目当てのバラマキ」と批判を強めた。ある閣僚が「どうやって成立させるのか」と疑問視するなど、政府内には補正編成への慎重論も根強かった。

さらに自民が先週末に実施した参院選情勢調査の「好結果」も補正先送り論を後押しした。与党が非改選を含めて過半数の議席を確保する可能性が高いことが分かり、自民幹部は「物価対策は成立したばかりの25年度予算に入っている。関税の具体的な影響は見通せるわけがない」と見送り論を主張。予備費による電気・ガス料金補助を6~8月に再開させる方針に転換した。

一方、参院選を意識して大型の経済対策を求めていた参院自民や公明は「選挙で掲げる目玉がない」(自民ベテラン)との不満を募らせており、改めて消費税減税を求める動きが出ている。参院自民は所属議員に対し、17日を締め切りに「緊急に実施すべき対策」を問う異例のアンケートを実施。回答項目には減税措置も入っており、中堅議員は「消費減税と書く」と明言した。

公明は給付と減税の組み合わせを模索。消費税減税を参院選公約に盛り込む可能性を排除していない。岡本三成政調会長は16日の記者会見で「他国で消費税を減税したときの物価や景気に与えた影響を情報共有しながら党内で政策を取りまとめる」と語った。

石破茂首相が指導力を示さず、経済対策の議論は今後も曲折が予想される。自民幹部は「政権内で参院や公明との対立が激化するかもしれない」と漏らした。

【時事通信社】 〔写真説明〕首相官邸に入る石破茂首相=16日、東京・永田町 〔写真説明〕記者会見する林芳正官房長官=16日、首相官邸

2025年04月17日 07時42分


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