トランプ米政権の関税措置に関する日米交渉では、米国が「非関税障壁」だと批判してきた日本独自の安全基準や電気自動車(EV)補助金などの制度見直しも焦点となりそうだ。これらについては日本の自動車業界が要望してきた内容と重なる部分もある。追加関税の先行きは不透明だが、業界内では、交渉が結果的に各社に有利な制度改正につながる可能性があると期待する声が出ている。
財務省の貿易統計によると、2024年に日本は米国に約135万台の乗用車を輸出したが、米国からの輸入はわずか1万4000台強。金額ベースでは輸出の約5兆9000億円に対して輸入は1500億円弱と3%に満たない。
米通商代表部(USTR)は、米国と異なる日本の安全基準やEV補助金、独自の充電規格などが「日本市場への進出を阻んでいる」と指摘。政府関係者は、トランプ氏も赤沢亮正経済再生担当相との協議で「日本では米国車が1台も走っていない」と主張したと明かす。
ただ、米国車は一般的に日本車よりも車体が大きく、燃費性能で劣ると評価されている。日本では「こんなに道路が狭い国で大きな車は売れない」(松本正義関西経済連合会会長)との見方が支配的で、トランプ氏らの要求通りに非関税障壁を撤廃しても、米国車の販売増につながる保証はない。
それでも国内業界の一部はトランプ氏の「外圧」を一種の追い風と受け止める。車両の安全性を確認する日本の認証制度には「書類の手続きが多すぎる」(大手メーカー関係者)と不満があり、業界はIT活用などを通じた簡略化を求めてきた。EV補助金についても「税負担軽減の方が効果が大きい」(別の大手幹部)として関連税制の見直しを目指しており、政府などへの働きかけを強める考えだ。
米政権は3日に日本から輸入する自動車に対して25%の追加関税を発動しており、早期の適用除外は業界にとっての最優先事項だ。これに加えて非関税障壁を巡る交渉も今後の経営環境を左右しかねない課題となっており、関係者が神経をとがらせる状況が続きそうだ。
【時事通信社】
2025年04月19日 07時16分
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