【ワシントン時事】トランプ米大統領の高関税政策が、インフレ高進と景気悪化を同時にもたらすとの懸念が強まっている。これを受け、米株価は軟調に推移。いら立つトランプ氏は連邦準備制度理事会(FRB)に利下げを要求するが、自らの政策がブーメランとなって米経済の下振れリスクを招いているのは明らかだ。不透明感の解消には貿易交渉での速やかなディール(取引)が不可欠となっている。
FRB高官は最近、物価高の下で不況となる「スタグフレーション」を示唆する予想を相次いで公表した。ニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁は今年のインフレ率が3.5~4%に、ウォラーFRB理事は今後数カ月で5%に達すると予測。両氏とも失業率は来年、5%程度に悪化すると見込んでいる。
パウエルFRB議長は16日の講演で、インフレ再燃と雇用悪化が同時に進むリスクを背景に、政策運営は「困難なシナリオ」に直面しかねないと懸念。市場では利下げ期待が高まるが、「情勢がはっきりするのを待つ」と述べ、慎重な姿勢を鮮明にした。
そんなパウエル氏にトランプ氏は17日、SNSで利下げ判断が「いつも遅すぎ、間違う」と不満をぶちまけた。記者団には「わたしが求めればパウエル氏は辞任する。彼には不満だ」と明言した。
ただ、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事が「不透明感を解消すれば、経済に極めてプラスの影響を及ぼす」と語るように、カギはトランプ関税の行方だ。トランプ氏も、各国との協議に関し「今後3~4週間で全体の結論が出るだろう」と、早期に成果を出したい考えをにじませる。
もっとも、貿易相手の出方は不明だ。フランス出身の著名経済学者、オリビエ・ブランシャール氏は17日のイベントで、欧州は「(高関税で)自ら墓穴を掘った米国と同じことをやる必要はない」と助言。静観し、トランプ氏から折れて来るように仕向けることが有効だと訴えた。
【時事通信社】
2025年04月19日 07時14分
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