低年金対策、相次ぐ後退=改革の目玉外し法案提出



政府は16日、年金制度改革関連法案を閣議決定した。当初目指していた3月中旬の予定から2カ月遅れでようやく国会提出にこぎ着けたが、改革の目玉である将来世代の低年金対策は、参院選への影響などを懸念する自民党の意向で削除や後退が相次いだ。こうした対応を問題視する野党は、法案から削除された基礎年金底上げ策を復活させる修正案を提出する構えで、今後の国会審議は激しい論戦が予想される。

少子高齢化で保険料を負担する現役世代が減る影響で、将来世代が受け取る年金は長期にわたって減額調整が続く見通し。特に全国民に共通する基礎年金は現在より給付水準が約3割も下がるため、厚生労働省は対応策として、厚生年金の積立金と国費を活用した底上げを検討した。

しかし、底上げ策は自民内で「厚生年金の流用だ」「高齢世代の厚生年金額が一時的に減ってしまう」との批判が噴出。国費投入による将来的な増税を懸念する声も出た。厚労省は底上げ策の本格実施の判断を5年後に先送りする修正で理解を求めたが、最終的に法案からの削除を余儀なくされた。

法案には給付の手厚い厚生年金に入るパートや非正規労働者の範囲拡大策も盛り込まれたが、「従業員51人以上」の企業規模要件撤廃などで保険料を折半する中小・零細企業の負担が増えるため、自民や関係団体が反発。2029年10月に撤廃する案を修正し、35年10月までに4段階でなくす案で折り合った。パートらの厚生年金加入が遅くなり、低年金対策としての効果は後退することになる。

野党は低年金対策の削除や後退を批判。特に重要な基礎年金底上げ策について、立憲民主党は法律に明記した修正案を提出する方向だ。同党幹部は「対策を打たないと将来、低年金で生活保護に陥る人が急増し、かえって公費負担が増える」と主張している。

【時事通信社】

2025年05月17日 07時12分

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