安倍晋三元首相が奈良市内で街頭演説中に銃撃され死亡した事件は、8日で発生から3年となった。殺人や銃刀法違反などの罪で起訴された山上徹也被告(44)の初公判は10月28日に決まり、公判では世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が被告の成育に及ぼした影響や、犯行に使用された手製銃の銃刀法上の位置付けが焦点となる見通しだ。
山上被告は事件直後から安倍氏を殺害したことを認めており、初公判でも殺人罪については争わないとみられる。それでも事件から公判開始まで長期化した主な理由は、教団が被告の成育に及ぼした影響の公判での扱いについて、検察側と弁護側の意見が大きく対立したことにある。
山上被告は事件後、母親が教団に多額の献金をして自己破産に追い込まれたとし、「教団に恨みがあり、安倍氏が(教団と)つながりがあると思った」と供述。弁護側は、こうした被告の境遇を量刑に反映させるため、心理学の専門家による「情状鑑定」を公判前に実施するよう裁判所に求めた。しかし、検察側は「宗教を問う裁判ではない」と反対し、請求は却下された。
弁護側は、宗教学者らから協力を得て、教団が被告に与えた成育上の影響を公判での争点にしたい考えだ。検察側は争点とすることには反対しているとみられ、最終的には今後の公判前整理手続きで決まる見通しだ。
また、事件に使われた手製銃が、銃刀法が規定する「拳銃等」に該当するかも焦点だ。山上被告は銃の発射罪に問われているが、事件当時の同法では「拳銃等」の要件を満たさない自作銃や猟銃は発射罪の適用対象外だった。検察側は被告の手製銃は「拳銃等」の要件を満たしていると主張するが、弁護側は要件を満たしていないため発射罪は成立せず、無罪だと公判で主張するとみられる。
公判は裁判員裁判で審理される予定。2023年6月には奈良地裁に不審物が届き、第1回公判前整理手続きが中止になったことから、公判中は裁判所の警備体制が強化される。関係者によると、開廷日には他の裁判は行われない予定だという。
【時事通信社】
〔写真説明〕山上徹也
被告
2025年07月08日 07時07分