
殺傷能力のある武器の輸出が原則解禁され、国内の防衛産業は大きな転機を迎えた。東南アジアの同志国などとは装備品協力が急ピッチで進展。三菱重工業など大手重工メーカーは今後、人員や生産能力の増強が課題となる。
高市政権は4月、安全保障政策を大転換。時事通信が3月に実施した世論調査で48.2%が反対するなど、異論が強かった武器輸出の原則解禁を決めた。安保環境の変化とともに、防衛産業の生産基盤維持を理由に挙げた。
決定に先立ち、豪政府は昨夏、次期フリゲート艦に海上自衛隊の護衛艦「もがみ」改良型を選定。殺傷能力があるため、例外的に輸出が認められるようにオーストラリアとの「共同開発・生産」と位置付けた。全11隻のうち、最初の3隻は三菱重工が日本で建造し、輸出する。伊藤栄作社長は「政府の要請に基づいてメーカーとして努力する」と話す。
今後は、日本と「防衛装備品・技術移転協定」を結んだ国に原則として輸出できる。ニュージーランドも「もがみ」改良型を新型艦候補に挙げている。東南アジアの同志国とも装備品協議が加速しており、フィリピンとは中古護衛艦を移転することで大筋合意。インドネシア政府は中古の潜水艦に関心を寄せる。
IHIの井手博社長は「装備移転は伸びしろだ」と指摘。哨戒機やミサイル用エンジンを製造する川崎重工業の橋本康彦社長は「若者を中心に日本をどう守るか真剣に考える人が増えている。決定を前向きに受け止めている」と、解禁を歓迎した。
メーカーにとって、課題は生産体制の強化。これまで防衛省向けの受注生産に限られてきたため、「撤退した企業が多く、供給網は弱体化した」(経済産業省幹部)。大手も、2023年度以降に防衛費が大幅に増額されたことに伴って増強に乗り出したばかりだ。
三菱重工はそれまで年間5000億円規模だった防衛関連事業の受注額が3倍超に拡大。受注残高は25年度末に約4兆円に積み上がった。このため、24年度末に7800人余りだった航空・防衛・宇宙部門の人員を今年度中に1万人程度へ増やす。
IHIは防衛ミサイル用「固体ロケットモーター」などを製造する群馬県富岡市の工場に、28年度中の完成を目指して新工場棟の建設を進めている。
民間シンクタンク、地経学研究所の小木洋人主任研究員は輸出先が欧州などにも広がる可能性を指摘。その上で、「設備やマンパワーに先行投資する姿勢が重要だ」との見方を示した。
【時事通信社】
〔写真説明〕護衛艦「もがみ」改良型のイメージ画像(三菱重工業提供)
2026年07月18日 07時03分