
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が31日から2日間、米南部ノースカロライナ州アッシュビルで開かれる。世界的なインフレや中東情勢などの地政学リスクが世界経済の重しとなる中、各国が政策対応を協議する。元財務官で国際経済戦略センター理事長の中尾武彦氏と、元日銀理事でみずほ総合研究所の門間一夫エグゼクティブエコノミストに話を聞いた。
◇顔合わせた議論に意味
中尾武彦・元財務官
―世界経済の現状は。
今のところ、米国の関税政策も中東などの地政学的問題も、成長やインフレに恐れていたほど深刻な影響をもたらしていない。一方、人工知能(AI)関係のデータセンターや半導体の投資は世界経済を押し上げ、成長率は底堅い。投資に見合う収益が上げられるかなど、AIにはバブル的な要素もあり、株価が修正される可能性はある。
―日本の金融政策は。
極端な円安で国民の購買力が減り、国益を損ねている。円安を修正し、インフレ率や長期金利を安定させるには、もっと早い政策金利の引き上げが必要になる。実質金利はマイナスで、日銀は毎回の金融政策決定会合で利上げしていいくらいだ。
―財政政策は。
今後は国債の借り換えのたびに高い金利になり、国債費が増える。国内総生産(GDP)の増加で債務残高対GDP比率は下がっているが、「責任ある積極財政」の責任の方を軽視してはならない。
―G20で日本が果たすべき役割は。
日本は自由貿易体制、途上国への開発援助など、リベラルで協調的な国際秩序に貢献してきた。信用をもとに、これからも役割を果たすことができる。中国との関係も対話できる状態に持っていくことが重要だ。大国が狭い意味での国益を追求し、協調は難しくなっているが、各国が集まり、顔を合わせて議論することには意味がある。
◇「ミドルパワー」で連携
門間一夫・元日銀理事
―世界経済の状況は。
地政学リスクなど、非常に大きな不確実性がある。ホルムズ海峡の封鎖に伴うエネルギー価格上昇が世界経済の大きな重しになっている。世界的にインフレ圧力が発生し、長期金利の上昇にもつながっている。
―G20は有効に機能しているか。
意見交換には一定の意味があるが、効果的な議論ができるかは懐疑的だ。この10年ほどで国際的な協調の精神が失われた。いくら議論しても相手国の考えを確認するだけにとどまる状況では、会議の機能度も低下せざるを得ない。
―国際協調が弱まった背景は。
中国の変質が根本にある。かつては中国も西側社会と一つになっていき、民主主義市場のメカニズムで経済が動くという大前提があった。その後、中国は西側とは違うルールで経済や軍事を強化するようになり、米国も方針を変えた。世界1位、2位の国が対立すれば、国際協調の精神は当然低下する。
―日本はどんな役割を担うべきか。
日本だけで世界全体に向けてできることには限界があるが、全て米国に加担すればいいということでもない。何がフェアで、どういう道を目指すべきなのか考える必要がある。欧州やアジアなどと連携し、「ミドルパワー」の一員として米中の対抗軸をつくると同時に、世界全体の秩序を議論して協調的環境に戻す努力をするべきだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕インタビューに応じる中尾武彦・元財務官(右)と元日銀理事の門間一夫氏
2026年08月30日 07時06分