【シドニー時事】オーストラリア下院総選挙で惨敗した野党・保守連合は、党勢立て直しに取り組む。保守色を強め政府効率化などトランプ米政権と似通った公約を掲げたことが裏目に出たため、新指導者のリー自由党党首の下で路線を穏健化できるかどうかが課題だ。特に支持の低かった女性や若者に照準を合わせ、政策の見直しを進める。
2選挙区が未確定だが、16日時点で保守連合は改選前の53議席から43議席に減り、93議席の与党・労働党の半分以下にとどまった。ダットン前党首の落選を受けて自由党初の女性党首となったリー氏は、政権奪還には「良識ある中道」の支持が不可欠だと指摘。「現代の豪州を反映した党にしなければならない」と意気込む。
保守連合にとって深刻なのは、女性や若者に著しく不人気なことだ。総選挙直前の全国紙オーストラリアンの世論調査によると、政権党として労働党と同連合のどちらに期待するかの回答は、女性で「62%対38%」、18~34歳で「74%対26%」と、圧倒的に労働党が優位だった。
同連合は総選挙で「政府職員のテレワーク廃止」を公約したものの、子育て世代などの反発を受けて撤回に追い込まれた。学生ローンの返済負担軽減といった若者向けの政策でも労働党に先手を打たれ、有権者から「時流に乗り遅れている」との声も聞かれた。原発導入の公約が選挙で拒否されたことで、エネルギー政策をどう練り直すかも焦点だ。
保守連合政権で国防相などを務めたクリストファー・パイン氏は、シドニー・モーニング・ヘラルド紙への寄稿で「選挙で有権者から与えられた教訓に学ばなければ、万年野党になる」と警告。古巣に変革を促した。
【時事通信社】
〔写真説明〕オーストラリアのリー自由党党首(手前)=13日、キャンベラ(AFP時事)
2025年05月17日 13時37分