【ブリュッセル時事】世界報道写真財団(本部アムステルダム)は16日、ベトナム戦争中の1972年にナパーム弾攻撃から裸で逃げる少女を写した有名な写真について、撮影者名のクレジット表記を一時停止すると発表した。これまで撮影者とされてきたカメラマンとは別の人物が撮った可能性が浮上し、財団が独自に調査を進めた結果、撮影者の特定は困難と判断した。
この写真は当時、ベトナム戦争の惨禍を象徴する一枚として世界的な注目を集め、反戦運動を盛り上げるきっかけにもなった。米AP通信のカメラマンだったニック・ウト氏が撮影者としてピュリツァー賞を受賞し、世界報道写真大賞にも選ばれた。
しかし、今年1月に米サンダンス映画祭で上映されたドキュメンタリー映画が、実際の撮影者はウト氏ではなく、地元のフリーランスのカメラマンだったと指摘。これを受けて財団が当時の状況を検証したところ、ウト氏とは別の2人のカメラマンの方が、撮影に適した場所にいた可能性が高いと判明した。
財団は声明で「写真自体に疑いはない。20世紀の歴史の重要な瞬間を捉えた写真として、受賞した事実は変わらない」と強調。その上で、撮影者が完全に特定されるまでクレジット表記を停止する考えを示した。
〔写真説明〕「ナパーム弾の少女」の写真とカメラマンのニック・ウト氏=2022年5月、イタリア北部ミラノ(EPA時事)
2025年05月17日 13時36分