
オランダには画期的な戦術「トータルフットボール」に並び立つ伝統がある。それは高い育成力だ。同国の名門アヤックスで育成年代の分析責任者を務めるなど、豊富な経験を持つサッカー指導者の白井裕之さん(48)に話を聞いた。
オランダの人口は約1800万人で、国土は九州とほぼ同じ大きさ。日本より限られた環境ながら、屈指の名手が多く生まれている。20世紀なら伝説的選手のクライフ、世界最高のFWと称されたファンバステン。今も世界的な逸材の宝庫だ。
現在はトータルフットボールを原点に、オランダ型育成理念「ダッチビジョン」が浸透している。技術に加え、状況判断など思考力の養成も主眼。特徴的な点は「ボールと相手とゴールがある中で取り組むのが基本。個人練習で形をつくるのではなく、実戦で個の力を養う考え方」と話す。
2010年代にはアヤックスのアドバイザーだったクライフ氏が育成改革を進めた。「『サッカーはチームスポーツではなく、個人競技の集合体』と再定義した。ここから大きく変わった」と言う。全ての年代で強化方針を共有し、個を伸ばす仕組みが整えられた。
白井さんは愛知県出身で、愛知学院大を卒業後にオランダへ。年代別代表のスタッフにも就任するなど長く過ごした。1キロでも自転車をこげばスポーツ施設があるほど充実した環境や、地域の理解にも驚いたという。「近年はMFやDF、GKら世界レベルの選手が生まれ、経験を積んで円熟味が増している時期」とみる。日本の成長も目覚ましい中、両国の対戦は育成力のぶつかり合いと言えるかもしれない。
【時事通信社】
〔写真説明〕インタビューに答えるサッカー指導者の白井裕之さん=3月4日、名古屋市
2026年06月04日 07時12分