【ワシントン時事】トランプ次期米政権の発足は北東アジアにも大きな影響を及ぼしそうだ。関税を武器とするトランプ政権が中国の習近平政権と再び対立する見通しが強まっているほか、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との会談を模索するとの観測も浮上。日本を含む周辺国は難しいかじ取りを迫られる。
◇分断かディールか
トランプ次期大統領は2024年12月の記者会見で、中国の習国家主席との関係について「手紙を通じて非常に良い対話をした。中国と米国は世界のあらゆる問題を共に解決できる」と語った。「素晴らしいやつだ」とも強調し、良好な関係を誇示した。
一方でトランプ氏は中国からの輸入品に高関税を課す方針を示し、対中強硬派のルビオ上院議員とウォルツ下院議員をそれぞれ国務長官、安全保障担当の大統領補佐官に起用する意向だ。「第2次貿易戦争」に向けた駆け引きが始まっている。
米シンクタンク「ジャーマン・マーシャル・ファンド」の中国専門家ボニー・グレーザー氏は「デカップリング(分断)が目標なら、中国は強硬手段で応じるだろう」と述べ、高関税に対して中国側が厳しい輸出規制で対抗すると予測する。
ただ、グレーザー氏は大統領選後の発言から「トランプ氏がディール(取引)を望んでいるように見える」と指摘。1期目に米中貿易協議を巡る「第1段階」の合意を交わした経緯もあり、交渉の余地が残る。
◇米朝対話、後回しも
「返り咲けば仲良くやる。彼は私がいなくて寂しいだろう」。トランプ氏は24年7月の共和党全国大会で正恩氏との関係再構築に意欲を示した。
トランプ氏は1期目に正恩氏と3度会談したが、非核化協議は19年2月にハノイで行った首脳会談で決裂。北朝鮮はバイデン政権との対話に応じていない。
トランプ氏周辺では正恩氏との直接対話を目指す動きが出ているとされる。国家情報会議(NIC)で北朝鮮担当情報官を務めたシドニー・サイラー氏は「トランプ氏は危険な独裁者との対話は賢明なことだと考えている」と語る。
ただ、中ロが制裁に協力し、厳しい包囲網を構築した1期目と比べ、北朝鮮への国際的圧力は低下した。サイラー氏は、トランプ氏がウクライナや中東情勢を優先する公算が大きいと指摘。非核化協議の停滞が続く可能性がある。
【時事通信社】
〔写真説明〕オンラインで取材に応じる、米シンクタンク「ジャーマン・マーシャル・ファンド」のボニー・グレーザー氏=2024年12月20日
〔写真説明〕シドニー・サイラー元米国家情報会議(NIC)北朝鮮担当情報官=2024年12月17日、ワシントン
2025年01月03日 19時07分