【ニューデリー時事】インドのモディ首相は今年9月に75歳の誕生日を迎える。所属する与党インド人民党(BJP)で「定年」とされる年齢だが、モディ氏はこの内規に縛られず2029年までの3期目任期全うを目指しているようだ。一方、後継レースを巡る議論も熱を帯びてきた。
◇長老に引退迫った過去
モディ氏自身は過去にアドバニ元副首相らBJP長老に対し、75歳以上を理由に事実上引退を迫ったことがある。政治アナリストのスミット・ピール氏は内規はあるとしつつ、「こうした決まりや原則には常に例外が存在する」と話す。あるBJP関係者は「75歳定年」は長老を追い出すための方便にすぎないと語り、「29年までは間違いなくモディ氏だ」と断言した。
BJPは昨年の総選挙で単独過半数を割り込み、友党との連立で多数派を維持した。モディ氏の求心力も以前より落ちたと指摘された。ただ、同関係者によれば総選挙後に実施された北部ハリヤナや西部マハラシュトラといった重要州の議会選をBJPが制したことで力を取り戻しつつあるという。
◇腹心対聖職者
首相在任期間に制限はないが、モディ氏は29年に予定される次回総選挙の際に、息のかかった政治家に禅譲するとの見方がある。筆頭は、同氏が西部グジャラート州首相だった時からの腹心アミト・シャー内相(60)。地元メディアが実施した昨年8月の世論調査で、モディ氏の後継となるBJPの首相候補として最も人気を集めた。
配下に警察や情報機関を抱え、国内で唯一イスラム教徒が多数派だった北部ジャム・カシミール州の自治権剥奪を主導したこわもてだ。ただ「2番手だからこそ輝く」(外交筋)と、後継説を疑問視する声もある。
もう1人の有力候補は、2億人超と州別で最多の人口を抱える北部ウッタルプラデシュ州のヨギ・アディティヤナート州首相(52)。オレンジ色の服をまとうヒンズー教の聖職者でもある。
モディ氏がグジャラート州を経済発展に導いたように、アディティヤナート氏もウッタルプラデシュ州の開発に力を注いでいる。同調査ではシャー氏に次ぐ人気を得た。表立って首相への意欲は示していないが、別の外交筋は27年の次期同州議会選で勝てば「29年の総選挙で首相候補に名乗りを上げる」とみる。
シャー氏とアディティヤナート氏は先の総選挙で候補者擁立を巡り確執があったとささやかれた。次期首相候補選びではBJPの支持母体であるヒンズー至上主義団体・民族義勇団(RSS)の意向も大きく左右しそうだ。インドは今年にも名目GDP(国内総生産)で4位の日本を抜くとの予測もある。国力が増す中、後継レースに内外の注目が集まっている。
【時事通信社】
〔写真説明〕インドのモディ首相=2024年11月、ニューデリー(AFP時事)
〔写真説明〕インドのシャー内相(手前右)と、北部ウッタルプラデシュ州のアディティヤナート州首相(同左)=2024年5月、同州バラナシ(AFP時事)
2025年01月06日 08時01分