「ボランティア、直後から必要」=助け合う大事さ、理解を―室崎神戸大名誉教授・能登地震1年



能登半島地震では、石川県の馳浩知事が発生直後に被災地への不要不急の移動を控えるよう求めたため、ボランティアの初動は鈍かった。SNSで「被災者の迷惑」と批判の目を向けられることもあるボランティアだが、県災害危機管理アドバイザーを務めた神戸大の室崎益輝名誉教授(防災計画)は「被災直後から必要だ」と指摘する。

室崎さんは発生間もない1月6日から同県七尾市などに入り、水やおむつを避難所に届けながら視察した。時間帯により渋滞はあったものの、「ボランティアが緊急車両の通行を妨げている様子はなかった」と振り返る。

室崎さんは避難所に届く支援物資の仕分けや被災者への配布には人手が必要と強調。「手を取り一緒に涙を流すだけでも被災者の励ましになる。行政にはできない役割がある」と意義を説明する。

今回の地震で県はボランティアを事前登録し、県主導で派遣する仕組みを導入。1月6日から受け付け、県の専用バスで同27日から現地に送り始めた。市町も独自に募集を始め、約3カ月後の4月9日時点で合わせて延べ約6万人が活動した。

室崎さんによると、重機を使う道路工事といった、復旧に不可欠な作業は行政が業者に発注し、手が回らない部分をボランティアが担うのが本来の在り方という。室崎さんは「行政が業務を十分に発注せず、ボランティアに頼るのは違う。彼らは行政の手足ではない」と話す。

内閣府によると、日本では災害後、現地の社会福祉協議会(社協)がボランティアセンターを立ち上げることが一般的なため、態勢が整うまで受け入れは難しいという。これに対し室崎さんは、国際的には赤十字を中心に社協やNPOが担うのが普通だとして、「日本は受け入れ態勢を見直さなければならない」と話す。

ボランティアを巡っては、SNSで「被災者に迷惑だ」などの投稿もある。室崎さんは「被災地で迷惑をかけてはいけないという考えは重要」とする一方、「だから来るな」では若者らが行きにくいと指摘。発生3カ月で推計延べ120万人が活動した阪神大震災で見られたような「何とかしてあげたいという心が人々から消えた」と嘆く。

誰がいつ被災者になるか分からない災害大国の日本。室崎さんは「ボランティア文化が根付かなかったのは社会全体の責任。一人一人が助け合う大事さを理解して輪を広げるしかない」と話した。

【時事通信社】 〔写真説明〕能登半島地震で、道路に散乱した災害ごみを片付けるボランティア=2024年2月10日、石川県輪島市

2025年01月01日 07時06分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース