原子力規制委員会は能登半島地震後から、原発事故時に被ばくを避けるための「屋内退避」の具体的な運用方針について専門家検討会で議論を始めた。秋に示された中間まとめでは、退避期間の目安を3日間とし、解除や避難への切り替えの判断は国が行うことなどを盛り込んだが、自然災害と重なった場合の対応については検討対象に含まれなかった。
東京電力福島第1原発事故後の2012年に策定された国の原子力災害対策指針(防災指針)では、放射性物質の放出が予想される場合、原発から5~30キロ圏内の住民に屋内退避を求めている。ただ、期間や解除条件などは明示されておらず、自治体から退避が長期化した場合の対応を懸念する声が上がっていた。
専門家検討会は24年4月から議論を重ね、同年10月に中間まとめを提示。国の防災基本計画を基に、退避期間の目安を3日間とした。解除条件として、冷却水注入などにより原子炉の状態が安定していることや、周辺に放射性物質を含む雲が滞留していないことなどを挙げ、解除や避難へ切り替える場合は国が判断することも明記。物資の受け取りなど、必要な一時外出は可能とした。
この中間まとめに対し、規制委には38自治体から約200件の意見が届いた。退避解除や避難に切り替える際の具体的な判断基準を求めるものや、退避期間中に診療や介護サービスなどがどの程度許容されるのかを問う声などがあった。
規制委はこうした意見を踏まえ、3月までに最終的な考え方を取りまとめる。ただ、能登半島地震で浮き彫りとなった、建物の倒壊や道路の寸断が生じる中での退避や避難については、「(原子力防災ではなく)自然災害防災で対応する問題」として、当初から検討対象に含まれなかった。
政府は家屋が倒壊した住民は避難所に行くよう求めており、住民が孤立した場合はヘリなどによる避難を想定している。
福井大の安田仲宏教授(原子力防災)は、「自然災害への対策を住民と行政の双方で見直すことが原子力災害時の対策にもなる」と指摘。規制委には「原発事故で放射線から身を守るすべである屋内退避のイメージが伝わるように、住民の身になって具体的な考え方を示してほしい」と求めた。
【時事通信社】
〔写真説明〕東京電力福島第1原発事故を受けて設置された放射線測定機(モニタリングポスト)=2021年2月、福島県双葉町
2025年01月01日 11時58分