2024年1月1日に起きた能登半島地震では、木造住宅が倒れて多くの被害が出たが、現行の耐震基準で造られた住宅はほとんどが倒壊を免れた。この基準は阪神・淡路大震災後に見直されたもので、国土交通省は「現行基準は倒壊防止に有効」と分析している。ただ、古い基準で造られた住宅も多く残るため、改修工事の促進が被害減少のカギとなる。
木造住宅の耐震基準は1981年と2000年に改正。00年改正では阪神大震災を踏まえ、土台と柱のつなぎ目に取り付けるボルトの本数を明確にするなどして、耐震性の確保を図った。
国交省が能登地震の被災地で木造住宅を対象に行った分析では、81年以前の基準で造られたものの39.3%、81年から00年までの基準によるものの16.9%が倒壊か大破していた。一方、00年以降の現行基準での倒壊・大破は2.0%にとどまった。
震度7で倒壊しない性能を求める81年の基準を満たす住宅の割合(耐震化率)は18年時点の全国平均で87%。国交省は30年までにほぼ100%の達成を目指し、改修を支援している。ただ、担当者は「『相続人がいないのに工事する気にならない』と二の足を踏む高齢者も多い」と話す。
そこで国交省は、高齢者向けの支援策を強化。自宅・土地を担保に銀行から改修費を借りて利子だけを毎月支払い、元金は死亡時に建物などを売却して返済する「リ・バース60」について、70歳以上であれば国が利子の支払いを肩代わりする仕組みを24年度内にも始める。
また、国交省は改修しない場合も「人命の安全につながる緊急的な方策」を採るべきだと強調。地震発生時に逃げ込める耐震シェルターや屋根付き防災ベッドを自宅内に設置するよう促している。
各自治体でも耐震強化に向けた独自の取り組みが進む。南海トラフ巨大地震で被害が想定される静岡県は「TOUKAI(倒壊)―0」のプロジェクト名で減災に注力。シェルターや防災ベッドの導入に約10万円を補助する制度を設けている。
もっとも、シェルター導入は45万円、ベッドは30万円ほどかかる。補助があっても負担が重いためか、制度の利用者は多くないという。県担当者は「制度の周知を徹底するとともに、本人負担を軽くする仕組みを考えたい」と話した。
【時事通信社】
〔写真説明〕阪神大震災で倒壊し、瓦が散乱する民家=1995年1月17日、兵庫県西宮市
2025年01月17日 07時08分