地方、訪日客対応追い付かず=SNS拡散で予想外の殺到―「映える」コンビニ、秘湯も混乱



訪日外国人が過去最多を更新する中、有名観光地のみならず、地方都市でも訪日客が急増している。SNSで情報が拡散されるためで、コンビニ越しに富士山が見える「映えスポット」や、映画のロケ地とされる場所には訪日客が連日殺到。山奥の秘湯も例外ではない。各自治体は想定を超える観光客への対応に苦慮している。

◇「黒い幕」やむを得ず

中国で春節(旧正月)の大型連休が始まった1月末、山梨県富士河口湖町のコンビニ前に長蛇の列ができた。奥にそびえる富士山がまるで屋根に乗っているように見える写真を撮るためだ。

町によると、きっかけは2022年の海外インフルエンサーによる投稿。コンビニ前の町道では危険な横断が後を絶たず、町は24年5月、眺望を遮る黒い幕を設置した。担当者は「反対意見もあったが、やむを得なかった」と振り返る。

幕は約3カ月後に撤去されたが、今度は車道への飛び出しを防ぐ防護柵を追加。横断歩道には白と緑の目立たせる塗装も施し、対策費は約300万円に上った。観光施策の自主財源確保のため、町は25年度、宿泊税導入の検討を本格化させる。

◇地元の対応、限界も

映画やドラマのロケ地となっている景勝地、北海道小樽市の「船見坂」では、私有地への立ち入りや違法駐車、ごみのポイ捨てといった迷惑行為が増加。市は春節対策のため、多言語で注意喚起する看板を持った警備員を先月28日から配置している。同日には最大約60人が訪れたという。

「SNSをきっかけに思いも寄らない場所がバズると、対応が後手後手になってしまう」。雪原にぽつんとたたずむ「クリスマスツリーの木」の人気に火が付いた北海道美瑛町の観光協会担当者はこう明かす。

山形県尾花沢市が頭を悩ませるのは、県内で人気の「銀山温泉」に乗り入れる車の多さだ。川の両岸に立ち並ぶ木造旅館やガス灯が大正ロマンを感じさせる同温泉は、ファンの間で「映画『千と千尋の神隠し』の舞台では」と話題になった。

しかし、温泉街には日帰り客用の駐車場がなく、路上駐車や慢性的な渋滞が発生。市は24年末から25年初めにかけ、マイカーやタクシーで訪れる日帰り客の入場を制限し、シャトルバスの利用を呼び掛ける実証実験を行った。実証の内容は市ホームページやSNS、チラシで紹介したものの、担当者は「訪日客にどう届ければいいか正直分からなかった」と嘆く。

地元関係者は「観光客には来てほしい。でもわれわれの力だけで景観や住民の安全を守るのは難しい」と吐露する。

【時事通信社】 〔写真説明〕屋根に富士山が乗ったように見えるコンビニの前で写真を撮る観光客=1月29日、山梨県富士河口湖町 〔写真説明〕目立つように白と緑に塗られた横断歩道=1月29日、山梨県富士河口湖町 〔写真説明〕北海道小樽市の「船見坂」で観光客に注意を呼び掛ける多言語看板を持った警備員=20日 〔写真説明〕観光客でにぎわうレトロな街並みの「銀山温泉」=1月20日、山形県尾花沢市

2025年02月23日 07時06分


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