中谷元防衛相とヘグセス米国防長官は30日の初会談で、日米同盟強化の継続を確認した。ヘグセス氏は保守系テレビ局の元司会者。日本側は異色の経歴の持ち主からどんな発言が飛び出してくるかと身構えていたが、杞憂(きゆう)に終わった形だ。ただ、米国の姿勢は米国第一主義を掲げるトランプ大統領の意向次第。「いつはしごを外されるか」(自衛隊幹部)との疑念はくすぶり続ける。
「米国第一は米国単独という意味ではない。中国共産党の威圧的行動に日米は結束して立ち向かう」。ヘグセス氏は会談後の共同記者会見でこう強調。この後、石破茂首相と首相公邸で面会すると「大統領からよろしく伝えるよう伝言を受けている」と伝達した。首相は「硫黄島での閣下のスピーチは非常に感動的だった」と持ち上げた。
トランプ氏は1980年代から「日本は巨額の防衛費を支払わないことで強い経済を築き上げた」と繰り返してきた経緯がある。そうした発言はかつてより減ったが、トランプ氏は今月、「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守らない」と改めて言及。米メディアでは国防総省が在日米軍強化計画の中止を検討していると報じられ、防衛省幹部は会談を前に「何を言ってくるのか」と戦々恐々としていた。
今回に限れば、心配は取り越し苦労に終わった。防衛相会談では在日米軍再編の着実な実施を確認。強化計画中止に絡んで在日米軍司令部の統合軍司令部格上げの見直しもうわさされたが、ヘグセス氏は会見で「統合軍司令部への移行に伴うフェーズ1を開始した」と表明した。
同司令部と自衛隊の統合作戦司令部の連携強化は、昨年7月に合意した同盟強化の柱だけに、日本政府内には安堵(あんど)が広がった。
会談前日には首相、中谷氏、ヘグセス氏が太平洋戦争末期の激戦地、硫黄島をそろって訪れる機会もあった。米国が訪問を望んだ背景には中国への警戒から日米同盟を重視していることもあるとみられ、中谷氏は「大成功」と胸を張った。
とはいえ、蜜月がいつまで続くかは分からない。ヘグセス氏は会見で、日本に防衛費増額を求めたか問われ、「数字は出ていない。日本は同盟国として模範的だ」と指摘。一方で「(関係国)全員がさらに努力する必要がある」とも付言した。トランプ政権内には防衛費の国内総生産(GDP)比3%以上への増額を求める声もあり、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)などの積み増しを求めてくる可能性も否定できない。
トランプ政権は現在、欧州・中東情勢に集中しており、対日政策を固めていないとの見方もある。今夏にもワシントンで開かれる見込みの外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が次の焦点で、日本政府は「どんなカラーを出してくるか」(関係者)と警戒する。
【時事通信社】
〔写真説明〕ヘグセス米国防長官(左)と会談する石破茂首相=30日午後、首相公邸(代表撮影)
〔写真説明〕儀仗(ぎじょう)隊の栄誉礼を受けるヘグセス米国防長官=30日午前、防衛省
〔写真説明〕談笑するヘグセス米国防長官(中央左)と中谷元防衛相=30日午前、防衛省
2025年03月31日 16時12分