政府は、南海トラフ巨大地震の想定震源域で、マグニチュード(M)8クラスが時間を置いて2回発生する事態を想定した被害推計を初めてまとめた。2回の地震の津波死者数は、時間差が数日の場合で約3万~6万6000人。うち後発地震は約10~700人となり、先発地震後に事前避難が適切に実行されれば、被害が大幅に減ると見込んだ。
南海トラフでは過去に、時間差で地震が起きるケースがあった。1944年の昭和東南海地震の約2年後に昭和南海地震が発生。1854年には安政東海地震の約32時間後に安政南海地震が続いた。現在は、想定震源域でM8以上の地震が起きた際、気象庁は「臨時情報(巨大地震警戒)」を発表し、後発地震で津波被害が出る恐れがある地域に事前避難を促す仕組みがある。
今回の推計は、想定震源域の東側と西側で連続して地震が発生したと想定。冬の深夜、風速8メートルの風が吹き、早期に避難する割合が低いケースでは、東側の先発地震で、津波による死者は約2万9000人に上る。数日後に西側で後発地震が起きると、事前避難がなければ津波の犠牲者はさらに約1万3000人増えるが、臨時情報を受けて対象者全員が避難すれば約700人増にとどまる。
一方、西側で先発地震が発生するケースでは、津波による死者は約6万6000人。東側で後発地震が起きると、事前避難がない場合はさらに約7900人増えるが、全員が避難すれば約10人増という。
また、震度6弱以上の揺れに2回襲われる地域もあるため、先発地震で建物に損傷を受けた後、後発地震の揺れで全壊するケースも考えられる。推計では、2回の地震の時間差が数年にわたる場合、その間に建物の耐震化を進めれば、後発地震の揺れによる全壊棟数を約8割減らせることも示した。
【時事通信社】
2025年04月01日 07時06分
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