米英合意「車輸入枠」に警戒感=貿易規模10倍以上の開き―日本、次回交渉へ影響見極め



トランプ米政権の関税措置に関する米英両政府の合意で、米国による英国製自動車への低関税輸入枠の設定が盛り込まれたことに、日本政府内で警戒感が強まっている。自動車を主要輸出品とする日本は、25%の追加関税の撤廃を求めて米国と交渉中。撤廃ではなく「輸入枠」の先行事例ができたことが、5月中旬以降に集中的に行う次回の閣僚交渉にどう影響するか見極めを急ぐ。

輸入枠は、米国が年10万台を上限に、英国車への関税率を現行の27.5%から10%に下げる内容。上限の10万台は、2024年の英国の対米輸出台数とほぼ同数となる。一方、財務省の貿易統計によると、日本の米国向け自動車輸出台数は24年に約138万台と10倍以上の開きがある。

このため、経済産業省幹部は「輸出規模が小さい英国のケースを日本にも適用するのはなじまない」と指摘する。日本は米国と他国の間で不利な前例ができないよう早期合意を目指していた。先を越されたのは誤算と言え、「焦って英国をモデルにしようとは思わない」(経済官庁幹部)との声も聞かれる。

ただ、日本の自動車産業にとって米国は、車の輸出全体に占める割合が台数で2割、金額で3割を占める重要市場だ。トランプ関税の打撃は大きく、トヨタ自動車は8日、今年4、5月だけで営業利益が1800億円目減りするとの試算を示した。赤沢亮正経済再生担当相は「一日一日とわが国の企業が損を出している」と懸念を強めており、自動車関税の見直しは急務となる。

こうした状況を受け、政府内でも「高い関税が据え置かれたままになるくらいなら、低関税輸入枠をつくるのも一つの考え方だ」(別の経済官庁幹部)との声が出始めた。

米側はこれまでの交渉で議論の対象をあくまで相互関税に絞る姿勢を示し、自動車を含む一連の関税措置撤廃を求める日本と大きな隔たりがあった。このため、米英合意で自動車や鉄鋼など分野別関税も取り上げられたことは、日米交渉の突破口になり得る。ただ、仮に自動車の輸入枠を議論の俎上(そじょう)に載せたとしても、「日本が納得できるような規模の枠を取るのは難しい」(政府関係者)状況が予想され、厳しい交渉が待ち受ける。

【時事通信社】

2025年05月10日 07時04分

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