追加利上げに不透明感も=5年の任期折り返し―植田日銀総裁



植田和男日銀総裁の5年の任期が折り返しを迎え、後半戦に入った。植田氏は就任以来、マイナス金利政策など大規模金融緩和の正常化を推進。足元では追加利上げのタイミングを探っているが、金融緩和の継続を志向する高市早苗前経済安全保障担当相が自民党総裁に就いたことで、今後の政策運営に不透明感が広がっている。

「いろいろ至らない点もあったが、一応、大規模緩和からの出口をある程度進めていくことができた」。植田氏は今月3日、大阪市での記者会見でこれまでの任期を振り返った。

植田氏は2023年4月9日に就任。24年3月にマイナス金利を解除し、黒田東彦前総裁が推し進めた大規模緩和に終止符を打った。同7月には政策金利を0.25%に引き上げ、今年1月には0.5%への利上げも決定。9月には保有するETF(上場投資信託)の処分の道筋を付けた。

日銀は今年1月の利上げ後、トランプ米政権の高関税政策の影響を見極めるため、政策金利を据え置いている。ただ、9月の金融政策決定会合では2人の政策委員が0.75%への利上げを提案。市場では、早ければ10月29、30日の会合で利上げに踏み切るとの見方も浮上した。

しかし、今月4日の自民党総裁選で高市氏が勝利すると、早期利上げ観測は急速に後退した。高市氏は総裁選後の記者会見で「金融政策に責任を持たなければいけないのは政府だ」と強調。高市氏のブレーンの一人である本田悦朗元内閣官房参与は「利上げは慎重に考えてほしい」と語る。

ある日銀幹部は「拙速な利上げでデフレを再燃させたくないのは、高市氏も植田氏も同じ思いだ。第2次安倍政権発足直後のような(政府と日銀の)緊張関係にはならない」と指摘する。ただ、利上げが遅くなり過ぎれば急激な円安や一段の物価高騰を招く恐れがある。残る任期は2年半。植田氏の手腕が問われそうだ。

【時事通信社】 〔写真説明〕日本銀行本店

2025年10月10日 08時08分


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