旧統一教会の影響巡り対立=「宗教的虐待」と弁護側―検察側は重視せず



安倍晋三元首相銃撃事件の公判では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が山上徹也被告に与えた影響をどう捉えるかが大きな争点になる。初公判で弁護側は、被告の人生は教団に翻弄(ほんろう)され、「宗教的虐待」を受けたと主張。検察側は「不遇とも言える生い立ちと、安倍氏は何ら関係がない」などと反論した。

検察側の冒頭陳述によると、母の入信を巡り家庭内でいさかいが絶えず、家庭が安息の場所でなくなった被告は、大学進学を断念。海上自衛隊に入隊していた際に自殺未遂を図り、その後、通信制大学に入学するも約1年で除籍し、職を転々とする中で、教団への恨みを募らせたとした。

当初、被告は岡山県内での襲撃を予定し、3銃身の手製銃を用意していたが、安倍氏に近づけず失敗。帰宅途中にインターネットで翌日に奈良市で応援演説をすることを知り、命中率が高く、バッグに隠しやすい2銃身パイプ銃に凶器を変更したと述べた。

検察側は、被告が不遇とも言える生い立ちであったことを争ってはいない。ただ、「事件の原因は虐待ではなく、少年事件のように扱うべきではない」と主張。被告は社会人として、法律を守る意識を十分に持っていたとした。

一方、弁護側は、被告の母の入信の経緯について、夫の自殺や、頭部の腫瘍が脳を圧迫する病気を抱え、命の危険を指摘された被告の兄の存在から、心の救いを求めたなどと詳述。被告は35歳の時に兄が自殺し、「大きな自責の念」を抱いたことから、教団への復讐(ふくしゅう)心を強めたと説明した。

事件に至る経緯についても、被告は安倍氏が自宅付近で応援演説をすることに「偶然を超えたもの」と感じて決意したと主張。「たまたま警備の間隙(かんげき)があったので、安倍氏の背後に進むことができた」とした。

【時事通信社】 〔写真説明〕初公判のため奈良地裁に向かう山上徹也被告を乗せたとみられる車(中央)=28日午後、奈良市

2025年10月29日 10時00分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース