
安全保障関連3文書の年内改定に向け、非核三原則の見直しが政府・与党の議論の俎上(そじょう)に載せられる見通しだ。三原則のうち「持ち込ませず」にかねて否定的な高市早苗首相が意欲をにじませ、与党もこれを踏まえて議論を進める構えをみせている。ただ、唯一の戦争被爆国として堅持してきた「国是」の変更には政府内にも異論があり、激しい議論が予想される。
「非核三原則を堅持している」「明示的に三原則見直しを指示した事実はない」。被爆地・広島選出の公明党の斉藤鉄夫代表が昨年11月の党首討論で「見直しを考え直してほしい」と迫ると、首相は議論の「現状」を説明するにとどめ、「堅持する」「見直さない」とは明言しなかった。
非核三原則は「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」とする政府の基本方針だ。1967年に当時の佐藤栄作首相が国会で表明し、71年の衆院決議などで国是として固まった。以来、歴代政権は三原則を堅持。2022年に閣議決定された国家安保戦略も「三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない」と明記している。
これに対し、首相は就任前から「持ち込ませず」に懐疑的な立場だ。24年の著書では「『持ち込ませず』は現実的ではない」と指摘。22年の戦略策定の際に閣僚の立場から「『堅持する』を削除してほしい旨を要請したが、私の担務外でもあり、かなわなかった」と明らかにしている。
首相の意向は政府・与党内に非公式に伝わっており、3文書見直しを担当する自民党の小野寺五典安保調査会長は非核三原則について「議論すべき課題の一つだ」と言明。日本維新の会の前原誠司安保調査会長も「しっかりと点検することが大事だ」と理解を示している。政府高官からは「日本は核を保有すべきだ」との発言まで飛び出した。
これに対し、被爆者団体は「核兵器を絶対に許してはならない」(日本原水爆被害者団体協議会)などと猛反発。こうした声を背景に野党には非核三原則見直しへの慎重論が広がっており、立憲民主党の野田佳彦代表は「堅持すべきだ」と強調。国民民主党も冷静な議論を呼び掛けている。
「持ち込ませず」を巡っては、民主党政権時代に岡田克也外相(当時)が「核の寄港を認めないと安全が守れない事態が発生すれば、時の政権が命運を懸けて決断する」と例外を容認する可能性に言及。政府内からは「既に非核2.5原則になっており、見直す必要はない」との声も漏れる。
台湾有事を巡る首相の国会答弁を受け、日中関係は急速に悪化。中国は非核三原則見直しにも矛先を向けており、関係改善の糸口がつかめない中で見直し論議に乗り出せば、泥沼化は避けられない。こうした背景から自民内にも「議論に意味があるのか」(閣僚経験者)と疑問の声がくすぶる。
【時事通信社】
〔写真説明〕党首討論で公明党の斉藤鉄夫代表に対し発言する高市早苗首相=2025年11月、国会内
2026年01月04日 07時04分