
【ワシントン時事】米ドルや円など法定通貨と価値が連動するように設計された暗号資産(仮想通貨)「ステーブルコイン」が、特に途上国で存在感を増しつつある。ドル預金の「代替」需要のほか、国際送金にも使われ始めた。途上国の脆弱(ぜいじゃく)な金融インフラや、高コストな既存の国際決済システムといった課題を解消する手段として期待が集まっている。
ステーブルコインは短期国債など流動性の高い安全資産を裏付けとする。時価総額は昨年末時点で、最大の「テザー」で1870億ドル(約29兆円)ほど。裏付け資産がなく、投資対象とされる暗号資産の代表格ビットコインの10分の1程度だが、時価総額は順調に増え続けている。
背景には途上国での旺盛な需要がありそうだ。ステーブルコインの約95%はドル建てだが、「80%以上の取引が米国外で行われている」(米専門家)。国際通貨基金(IMF)によると、アフリカ・中東と中南米での取引が経済規模に比べて顕著だ。高インフレに見舞われ、銀行システムも未整備な途上国で、安定したドルと等価のステーブルコインはドル預金の手段になっている。
ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使うステーブルコインは国境を越えた送金コストを「劇的、確実に縮小できる」(邦銀関係者)。国際送金は通常、コルレスバンクと呼ばれる中継銀行を経由するが、事務コストなどがかさむ上、時間もかかる。「手数料は送金額の最大20%に上る場合もある」(IMF)という。
途上国の場合、為替手数料などのコストが先進国よりも大きい。動画などコンテンツ配信や電子商取引といったプラットフォーム事業者は、途上国を含めて世界展開を図る。ただ、決済コストが高ければ「途上国では合理的な価格帯でサービス提供ができない」(前出の邦銀関係者)。ステーブルコイン利用でこうしたコストは「空気みたいになる」(同)と期待される。
一方、大半がドル建てのステーブルコインには、途上国から資本流出を招くリスクもある。アフガニスタンで地元通貨建てのステーブルコイン導入を支援する暗号資産運営機関、アルゴランド財団のブライアン・ウィポ氏は、食料品など日常の買い物では「現金払いや地元通貨建てコインが好まれる」と指摘。ただ、「ドル建てコイン市場の需要は明白だ」とし、各国が資本流出などへの対応策を決める必要があると訴えた。
【時事通信社】
〔写真説明〕ステーブルコイン最大手テザーのコイン=2022年5月、ロンドン(AFP時事)
2026年01月04日 19時02分