フィジカルAIで異業種連合=ロボ・車自動化、政府も後押し



人工知能(AI)でロボットや自動車が自律的に動く「フィジカルAI」を軸に、異業種間で企業連合を組む動きが相次いでいる。フィジカルAIには現場データが不可欠。AI開発で米国や中国に大きく後れを取る中、政府は「ものづくり」に強みを持つ日本の「勝ち筋」とみて、取り組みを後押ししている。

漢方薬メーカーのツムラや機械商社の山善など5社はこのほど、フィジカルAIのデータ収集センターを千葉県習志野市に開設した。AIを搭載した人型ロボットが工場などで実際に働くためには、人の動作を基にした大量の学習データが必要。単独では難しい設備整備や資金負担を複数企業で賄い、コストを抑えるのが狙いだ。

最大40台のロボットに作業を繰り返させることで、「状況判断を伴う作業」を含めて自律的に行動できるロボットを「育成」する。工場の設備改造を伴わない自動化が可能になるほか、将来的には音や温度の変化など、人の経験や勘に依存する「暗黙知」を可視化する効果も見込んでいる。

ツムラの熊谷昇一執行役員は「人口減少で労働力確保が困難になる中、(製品の)安定供給のためには自動化、無人化が必要だ」と強調する。

川崎重工業、ファナック、安川電機の国内ロボット大手3社は、富士通や米エヌビディアと連携。産業用ロボットは、フィジカルAIの活用が最も期待される分野で、福祉や小売りなど現場への実装を急ぐため競合同士が手を組んだ。また、京セラや神戸製鋼所、ソフト開発のアルム(金沢市)など約20社は、データやノウハウを持ち寄って熟練技術者の加工技術自動化を目指す。

ソフトバンクやNECなど44社が参画するノエトラ(東京)は、フィジカルAIの頭脳となるAI基盤モデルを独自開発し、30年度の実用化を目指している。丹波広寅社長は「今まで基盤は海外のモデルしかなかったが、第三極をつくり、選択肢を増やす」と意気込む。政府はプロジェクトに対し、今年度3800億円超の支援を決定した。

第一ライフ資産運用経済研究所の星野卓也主席エコノミストは、「人手不足、高齢化の先進国として、日本はフィジカルAIの実証の場として存在感を発揮しやすい」と指摘。ただ、「データは企業のノウハウの結晶。ライバル企業同士が出し合うのは簡単ではない」と課題も挙げている。

【時事通信社】 〔写真説明〕フィジカルAIで連携する米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO、左端)、富士通の時田隆仁社長(左から2人目)ら=7月16日、東京都港区 〔写真説明〕ツムラや山善などが参画するフィジカルAIのデータ収集センター=8月26日、千葉県習志野市

2026年10月05日 08時07分


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