
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が15日にタイ・バンコクで開かれる。原油価格が高止まりし、世界的なインフレ進行が懸念される中、各国の政策協調が焦点となる。元財務省財務官で国際通貨研究所理事長の浅川雅嗣氏と元日銀理事でちばぎん総合研究所社長の前田栄治氏に話を聞いた。
◇不均衡是正、粘り強く議論を
浅川雅嗣・元財務官
―G20の存在意義は。
アジア通貨危機をきっかけに経済、国際金融に絞って議論するために生まれたのがG20。ロシアによるウクライナ侵攻のような外交や安全保障に絡むテーマを持ち込むと枠組みが崩れてしまう。もともとの成り立ちを思い出しながら、各国の政策協調が求められるような議題を採り上げるべきだ。
―経常収支の不均衡が主要な議題だ。
不均衡の是正はまさにG20にふさわしいテーマだ。単に関税をかけて2国間で貿易収支が改善しても、当該赤字国全体の経常収支は変わらない。9月の財務相会議では、中国の過剰生産問題まで踏み込んだ。中国が反対しようとも、粘り強く議論する必要がある。
―外国為替相場で円安が常態化した。
高市政権下では日米の金利差が縮小しても円安が進行した。背景には拡張的な財政運営、日銀の金融政策に対する干渉への懸念がある。日米協調介入はタイミングも良かったし、通貨当局の決意を示すアナウンスメント効果があった。
―米国側の思惑は。
米国は自然災害や通貨危機でないと介入しないという立場だったはずが、平時に介入に踏み切ったのは驚きだ。介入を他国である日本の金融政策と絡めたことも従来の認識からすれば違和感がある。よほど米長期金利の上昇を回避したいということなのだろう。
◇世界で金融政策の局面変化
前田栄治・元日銀理事
―世界経済の先行きをどう見る。
トランプ米政権が高関税政策を打ち出し、中東情勢が悪化しても、世界経済は強靱(きょうじん)だった。人工知能(AI)関連の需要が思った以上に強く、防衛費など各国の財政支出も拡大傾向にある。どこかで調整局面が来るにしても、当面は底堅い状態が続く。ただ、財政不安、データセンターを整備するための社債発行は長期金利の上昇も招いている。
―日米欧は9月にそろって利上げした。
世界全体でインフレ懸念が高まり、政策局面が変わってきた。日銀は政策が後手に回るリスクが大きくなっているとみて、以前よりやや速いペースで利上げするだろう。当面は3カ月に1回程度の利上げが続き、政策金利は来年春ごろに1.75%に到達するのではないか。
―日米の協調為替介入の評価は。
日本単独では限界があり、協調介入によって円安に一定程度歯止めをかけることに成功した。ただし、為替介入だけで相場のトレンドが変わるわけではない。金融政策の正常化を進め、放漫財政にはしないというマクロ経済政策のスタンスを示す必要がある。
―G20は機能不全も指摘される。
各国が集まり、意見交換すること自体に意義がある。付随する個別の会談や事務方のミーティングも情報交換の機会になる。全会一致でなくとも、議長声明などの形で成果文書を出すことも重要だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕インタビューに答える浅川雅嗣元財務省財務官=8日、東京都中央区
〔写真説明〕インタビューに答える浅川雅嗣元財務省財務官=8日、東京都中央区
〔写真説明〕インタビューに答える前田栄治元日銀理事=5日、東京都中央区
〔写真説明〕インタビューに答える前田栄治元日銀理事=5日、東京都中央区
2026年10月10日 16時02分