サイバー攻防、新たな局面に=AI利用、「軍拡競争」の様相―不正アクセス、影響拡大



企業への不正アクセスが急増している。顧客情報の大量流出に加え、海外では電気製品のハッキングも発覚。高度化する人工知能(AI)が悪用された痕跡が相次ぎ見つかり、防御のためのAI活用も不可欠になっている。サイバー空間での攻防は新たな局面を迎え、さながら「AIの軍拡競争」(関係者)の様相を呈している。

◇中国系の痕跡

佐川急便は5323万件、カプコンは1177万件、バーガーキングは1118万件―。今月に入り、不正アクセスは加速度的に増えている。業種の幅広さと情報流出件数の多さが際立っており、システムの脆弱(ぜいじゃく)性を見つけるのに優れ、侵入プログラムも自動で作成できる最先端AIの悪用が強く疑われている。

GMOインターネットグループ傘下のセキュリティー企業、GMOサイバーセキュリティbyイエラエ(東京)が被害企業を調査した結果、攻撃に使われたサーバーを6台確認。いずれもAIによる侵入テストを行う中国系ツール「ARTEX(アルテックス)」が使われていたという。

昨年のアサヒグループホールディングスへのサイバー攻撃で名を売ったハッカー集団「Qilin(キリン)」。ネットワーク機器大手の米シスコシステムズは最近の調査で「コードが手書きではなく、AIの特徴を示している」と分析した。

◇生活インフラでも被害

サイバー攻撃は生活の基盤も直接脅かしている。フランスでは今月、大手スーパーなどの数百店でネットワーク接続型の冷蔵・冷凍設備が「強制除霜モード」に不正に操作された。庫内温度は50度に達し、大量の食品が廃棄されただけでなく、一部では火災も発生した。

米連邦捜査局(FBI)によると、7月下旬以降、米国各地の水道施設が次々にサイバー攻撃を受けた。浄化システムのまひで水道水に汚れが混ざり、一部の州は水を煮沸消毒するよう勧告。イランによる攻撃の可能性もささやかれる。

外国為替証拠金取引(FX)用サーバーを攻撃されたGMOインターネットは、「国民の金融資産を標的とした不正操作」として、国主導で攻撃を無力化する「能動的サイバー防御」の適用を要請した。

米セキュリティー大手クラウドストライクのリポートによると昨年、端末への侵入からデータの窃取までにかかった時間は平均29分、最速27秒だった。同社のアダム・マイヤーズ氏は、「セキュリティーチームが勝つにはより速く行動する必要がある。AIの軍拡競争だ」と強調する。

◇弱点、迅速に探知を

危機感を強める日本政府は今月、電力・ガスや金融機関などの重要インフラ事業者に、経営層主導でシステムや通信機器を確認するよう改めて求めた。攻撃者に先んじて脆弱性を見つけて修正するため、最先端AIのアクセス権を取得する動きが大手行以外にも広がる。

米セキュリティー大手トレンドマイクロは、複数のAIモデルで脆弱性を検知する企業向けサービスの提供を開始。エバ・チェン最高経営責任者は「攻撃の速度や被害の規模がこれまでに見られなかった水準に達している」と話す。

ウェブサイトなどに広く使われているプログラミング言語「PHP」の重大な脆弱性は先端AIモデルが発見したが、多くのサイトが一時閉鎖に追い込まれる混乱も生じた。ただ、公共政策調査会の板橋功研究センター長は「防御側もAIを活用して脆弱性をいかに速く探知して防いでいくかが重要だ」と指摘している。

【時事通信社】

2026年10月26日 07時03分

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