
人手不足や農地の大規模化への対応で、農家の負担が増す中、今後もコメを安定生産するために注目されているのが、「節水型乾田直播」だ。田んぼに水を張らずにイネの種まきと栽培を行うため、田植えや代かきが不要。水の管理に伴う手間も抑えられ、省力化に大きな期待がかかる。課題とされる収量確保へ企業の工夫が続く。
イネの安定生育へ、アサヒグループホールディングスは、ビールの製造過程で残るビール酵母の一部の活用に注力する。特別な技術で分解した液体を種子に塗ったり、浸したりすることで、発芽や根の成長を促す。試験導入した農場では根の密度が高まり、土から養分や水分を効率的に吸収する効果が見られたという。
水を張らないと、雑草が増えやすくなる問題もある。ドイツ化学大手BASFの日本法人は、除草剤のコストを抑制するため、衛星画像と人工知能(AI)を活用し、効率的な雑草の防除作業を請け負っている。昨年9月からは他の企業と共同で、農業分野では国内初となる収量保証サービスを始めた。収量が事前に取り決めた基準に満たない場合は料金を返還する仕組みだ。
農業生産法人ヤマザキライス(埼玉県杉戸町)の山崎能央代表(51)は「今はイノベーションが起きていく過渡期だ」と指摘する。節水型乾田直播を導入した同社の農地では、機械の設備投資額が通常の栽培法より6割削減。通常340円程度の玄米1キロ当たりの生産コストが75円に抑えられたという。水田から発生するメタンガスの削減など環境負荷軽減も期待されるとし、「誰でもできるよう、正しい情報を発信したい」と意気込む。
一方、農学が専門の東北大大学院の大谷隆二教授は節水型について「一定収量が得られるまで科学的データの蓄積が必要だ」と慎重な姿勢を示す。節水型は現時点では干ばつ地域などに限った導入を推奨した。
〔写真説明〕節水型乾田直播の農場で、アサヒグループホールディングスが開発したビール酵母資材を処理したイネ(左)と通常のイネ(同社提供)
〔写真説明〕節水型乾田直播を導入している自身の農場の前に立つ農業生産法人ヤマザキライスの山崎能央代表=17日、埼玉県杉戸町
2026年03月30日 14時32分