
顔認証技術による「顔パス」サービスがじわりと拡大している。駅の改札の入退場やスーパーでの支払いのほか、野球観戦も手ぶらで楽しめる。人工知能(AI)の進化で精度が向上し、不正が減るとの期待が高まる一方で、プライバシー侵害を懸念する声も根強く、徹底した情報管理が欠かせない。
ディスカウントストアなどを運営するトライアルホールディングスは、東京都や福岡県の15店舗でNECの顔認証技術を活用した決済サービスを導入した。事前に登録すれば、セルフレジで商品をスキャンするだけで、財布やスマートフォンを取り出すことなく買い物ができる。
東京ドームで開催される読売巨人軍の試合では、IDの取得などによりパナソニックコネクト(東京)の技術を使った顔パス入場や一部売店での手ぶら決済が可能だ。日立製作所と東武鉄道は、東武東上線池袋駅などに顔認証改札を導入。今後は周辺のコンビニをはじめとする商業施設の決済にも使えるようにする。
顔パスは、貴重品の紛失や不正入場の防止、待ち時間短縮などのメリットがある。特別養護老人ホーム「元気の家」(岡山県倉敷市)では面会の受け付けに利用されており、スタッフや入居者家族の負担が軽減されたという。
パナソニックコネクトの古田邦夫エバンジェリストは、「顔認証はAIの進化で精度が高くなり、さまざまな用途で使えるようになった」と説明。市場規模は昨年の557億円から、2030年には1300億円程度に拡大すると予想する。
一方、ID認証技術推進協会(東京)は、「(利用者には)行動を追跡されるのではないかといった不安がある」と指摘。「事業者にはプライバシーを侵害しないよう十分に配慮した上で、慎重な運用が求められる」としている。
〔写真説明〕トライアルホールディングスの店舗での顔認証決済の様子(NEC提供)
〔写真説明〕東武東上線池袋駅の顔認証システムが導入された改札=7月15日、東京都豊島区
2026年08月19日 14時31分