試合直後のベンチ前。智弁和歌山のエース渡辺は、満面の笑みを浮かべる横浜ナインに目をやりながら「力不足」と言った。初戦から好投を続けていたが、横浜の猛打を浴びて9失点。重い責任を背負い込んだ。
初戦から全5試合で先発。やはり疲れはあったのか、直球に威力はなく、打者を押し込めない。六回は「思ったコースに球がいかなくなった」。浮いた球を次々とはじき返されて大量点を失い、マウンドを去った。
横浜市の中学を卒業し、飛び込んだ近畿の強豪。1年生でベンチ入りを果たしながら、その夏と秋は県大会で敗れた。知名度が高い智弁和歌山。「正直、簡単に出られる」とまで思っていた甲子園への道はやはり厳しかった。投手転向後の昨夏は甲子園出場の念願をかなえたものの、自身も救援登板した初戦で敗退。聖地で勝つ難しさを知った。
頂点への夢を打ち砕かれた今大会。階段を上れば新たな挫折が待ち受ける高校生活だが、「この負けがあったからこそ今がある、と夏に言いたい」。最後の戦いを終えた時に、歩んだ道のりが正しかったかを確かめられる。
【時事通信社】
〔写真説明〕6回裏横浜2死一、三塁、駒橋(右)が適時打を放つ。左は智弁和歌山先発の渡辺=30日、甲子園
〔写真説明〕力投する智弁和歌山先発の渡辺=30日、甲子園
〔写真説明〕横浜に敗れ、応援席に向かう智弁和歌山ナイン=30日、甲子園
2025年03月30日 19時12分