
国別対抗戦デビス杯(デ杯)の元日本代表で、監督も務めた岩渕聡さんは現役時代に有望ジュニアだった錦織圭と初めて顔を合わせた。打ち合うと、「タイミングが普通ではないと思った。ボールをつかまえているような不思議な感じだった」。
岩渕さんはダブルスでツアー1勝を挙げたが、シングルスの世界ランキングは223位が最高。「松岡修造さん以外は苦労していて、自分もその真っただ中にいた」。成長した錦織が2008年にツアー初優勝を遂げた時は「常識をぶち壊された」と言う。一方で「難しく考え過ぎていた部分もあったと気付かされた」。日本人でも世界のトップを目指せるとの思いを持った。
デ杯監督時代は、けがも多かった錦織の状態を最優先。なかなか一緒に戦うことはできなかったが、練習などで影響の大きさは感じた。「積極的に若い選手に助言してくれる。若手は錦織が何をして強くなってきたかを見ていた」
23年には、当時のコーチが急きょ体調不良で離れることになった錦織から声が掛かり、「チーム」の一員となった。近くで接して「100%テニスに向き合った生活をしているんだと分かった」と言う。特別な選手の引退に、「もう少しやってほしいと思った。単純に彼のテニスが見られなくなる寂しさはある」と語る。
◇全米予選で大きな糧
坂本怜(IMG)は、錦織と同じく盛田正明テニス・ファンドの支援を受けIMGアカデミーで腕を磨いた。日本代表として同じ時間を過ごし、それ以外でもたびたび練習を共にした。24年全豪オープン・ジュニアの覇者は、今年6月に20歳になったばかり。将来を嘱望される大器は8月末、全米オープンの予選で錦織と対戦し、真剣勝負の中で大きな糧を得た。
「ところどころ、足が全く動かないウィナーを打たれた」。独特の間で打ったり、相手の読みを外したり。力や速さだけではないプレーが強く印象に残った。一方で、絶好調だったサーブでは錦織を圧倒し「圭君に通用するなら誰にでも通用するだろうという自信をもらった」。試合に勝ち、本戦切符をつかんだのは坂本。世界のトップ10入りを錦織に期待され「そんな簡単に言うなよと思った」と笑いつつ、「グランドスラムで優勝したい。期待に沿えるように頑張る」と先輩を超える覚悟を口にした。
錦織は引退を決めた後でもなお、「もっとうまくなりたい」「勝ちたい」との気持ちがあったと言う。テニスへの情熱を、今後はどのような形で表現していくのかが楽しみだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕錦織圭の練習をコーチとしてサポートする岩渕聡さん(右奥)=25日、東京・有明テニスの森公園
〔写真説明〕全米オープンの男子シングルス予選3回戦で坂本怜(右)に敗れ、握手する錦織圭=8月28日、ニューヨーク
2026年09月30日 07時02分