
愛知・名古屋アジア大会に、レガシー(遺産)はあるのか。日本選手団が史上最多のメダルを獲得した中、大会は幾多のトラブルに見舞われた。大規模な国際大会で大手広告代理店に運営を一括で委託しない異例の方式は、功罪を浮き彫りにした。
もともと不安含みだった。都市整備費を除く2021年東京五輪・パラリンピックの大会経費は1兆4238億円。一方、五輪より競技数や選手団の数が多い今大会の予算は、アジアパラを含めても2980億円。ノウハウを持つ大手代理店を欠き、不慣れなスタッフも少なくない。組織委員会の幹部は「当初から苦しさのある運営だった」と漏らす。
兆候もあった。関係者によると、会場の設営や運営を委託した大手イベント会社は期限までに基本的な図面を示さず、「まるでブラックボックス。情報の共有がない」。必要な設備や費用の算出が遅れ、開幕直前まで準備が続いた。
競技開始後も問題は頻発。ホッケーの韓国戦で北朝鮮国歌が流れ、バスケットボールでは韓国選手の送迎バスが来ないことも。大会側は説明や謝罪に追われた。
一方で、日を追うごとに改善も進んだ。宿泊環境を巡る問題への対応は迅速で、期限後の輸送予約ができないシステムに変更。総合大会の出場経験が豊富なスポーツ庁の河合純一長官は「そうした課題はいつものこと。しっかり解決している」と評価した。
国は大規模大会の運営ノウハウを蓄積し、継承する方針を打ち出している。25年のスポーツ基本法改正では、運営面における透明性の確保や人材育成を国の施策に位置付けた。大会後に解散する時限組織だからこそ、報告書や人材を残し、知見をつなぐ必要がある。
営業面では、スポンサー収入が目標額を上回る270億円に達した。選手村を設けず、コンテナ型宿泊施設やクルーズ船などで経費を圧縮した手法は、輸送の課題を含めて今後の国際大会にも役立つだろう。
国内では9月にラグビーの35年ワールドカップ(W杯)招致委員会が発足。将来的には五輪を含めた国際大会を招致する可能性もある。開催を巡る国内の批判で機運がしぼまないか、世界の見る目が変わらないか。成功もトラブルも余さず検証してこそ、この大会は次代につながる意義を持つ。
【時事通信社】
〔写真説明〕閉会式が行われるパロマ瑞穂スタジアム前で写真撮影を楽しむ観客ら=4日、名古屋市瑞穂区
2026年10月05日 07時02分