【カイロ時事】シリアのアサド独裁政権が反体制派の電撃的な攻勢で崩壊してから8日で1カ月。旧反体制派の主力組織「シャーム解放機構」(HTS)が主導する暫定政府は、国内の多様な民族、宗教・宗派をまとめ上げようと内外に穏健姿勢をアピールするが、分断を解消できるかは未知数だ。
新生シリアの実質的統治者として立ち振る舞うHTS指導者のアハマド・シャラア(通称ジャウラニ)氏は「世界に脅威は与えない」と強調。国内多数派のイスラム教スンニ派のみならず、アサド前大統領と同じ少数派イスラム教アラウィ派や、クルド人勢力など国内各派とも融和を進め、民主主義的な体制構築を訴える。
しかし、新体制移行への道筋はあいまいだ。暫定政府の任期は3月まで。それまでに政治、民族・宗教各派の代表者がシリアの将来について話し合う国民対話会議を開く予定だが、準備の遅れが伝えられる。
シャラア氏は選挙実施に「4年の準備期間が必要だ」との見通しを示す。HTSは将来解散する方針だが、新体制への移行プロセスが長引いて進まなければ、シャラア氏の「統治者」としての立場が固定化され、新たな独裁が進みかねない。
暫定政府は、アサド前大統領がロシアに亡命した後も国内各地で旧政権派の拘束を進める。また、クルド人勢力「シリア民主軍(SDF)」はシリア北東部の支配を続け、国土は分断されたまま。2011年から続くシリア内戦は、なお終結に至っていないのが現状だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕シリア旧反体制派の主力組織「シャーム解放機構」(HTS)指導者のアハマド・シャラア氏=2024年12月、ダマスカス(EPA時事)
2025年01月08日 12時38分