ふなずしに新たな魅力を=チーズケーキにアレンジ―専門家「継承にもつながる」・滋賀



琵琶湖やその周辺で捕れたニゴロブナなどの魚を、塩と米に漬け込んで発酵させた滋賀県の伝統料理「ふなずし」。すしのルーツとされるが、独特のにおいから敬遠する人も多い。新たな魅力を発信しようと、スイーツにアレンジする試みが同県内で行われている。

彦根市のレストラン「ジラソーレ」では2021年4月から、ふなずしを活用したバスク風チーズケーキを提供している。レシピを考案したのはオーナー兼シェフの小島匠一さん(40)。山梨県出身で、結婚を機に15年、同市に移住した。それまでふなずしの存在を知らなかったが、知人の勧めで自ら漬け込んだ経験などから、魅力に引き付けられた。

考案のきっかけとなったのは、湖魚を扱う県内の業者から、ふなずしの発酵したご飯「飯(いい)」をパウダー状に加工した製品の利用提案があったことだった。「ふなずしとチーズは発酵食品同士で相性が良いのでは」。ケーキの生地に練り込むパウダーの配分で試行錯誤を繰り返し、21年2月に完成させた。

人気はまずまずという。小島さんは、ふなずしが好きな人には魅力の再発見に、食べたことがない人には「興味を持ってもらうきっかけになれば」と力を込める。

滋賀県内では、「飯」を使ったポテトサラダや、自家製ふなずしを挟んだサンドイッチを提供する店も出てきている。

こうした動きに、ふなずしの歴史に詳しい京都華頂大の橋本道範教授は、ふなずしの製法自体も変遷を重ねてきたと指摘する。現在は発酵が進みやすい夏場に漬け込むのが一般的だが、江戸時代の料理書『合類日用料理抄』には冬場に漬け込む方法が記載されているほか、昔から製法も多様だったという。

橋本教授は「時代に合わせてアレンジもすることで、若い人や次世代へのふなずし継承につながる」と話した。

【時事通信社】 〔写真説明〕ふなずしを使ったチーズケーキを持つ小島匠一さん=6日午後、滋賀県彦根市

2025年05月12日 13時30分


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