法務省は27日、神奈川県座間市で男女9人が殺害された事件で死刑が確定した白石隆浩死刑囚の刑を執行した。死刑執行は2022年7月以来2年11カ月ぶり。同省が執行の即日公表を始めた1998年以降では執行の空白期間は最長だった。
鈴木馨祐法相は27日午前10時半から法務省で臨時の記者会見に臨み、「慎重な上にも慎重な検討を加えた上で、執行を命令した」と公表。23日に執行命令書に署名したことも明らかにした。
刑事訴訟法は死刑判決確定から6カ月以内の執行命令を求めているが、この規定は「訓示規定」(法相)と解釈されている。実際には関係記録の精査などに時間を要するのが通例で、法務省によれば、判決確定から執行までの平均期間は15~24年の10年間で9年6カ月となっている。
ただ、93年以降はほぼ毎年実施されてきた経緯があり、3年近い空白は極めて異例だ。国際機関や人権団体が求める事実上の執行停止(モラトリアム)に入ったのではないかとの見方も浮上していた。
空白期間が続いた背景には死刑を巡る世論の変化があるとの見方がある。内閣府が2月に公表した世論調査では「死刑を廃止すべきだ」と答えた人は16.5%。調査方法の変更があったとはいえ、5年前の9.0%から急増した。
この間、死刑を巡る社会の動きも相次いだ。23年3月、東京高裁は静岡一家4人殺害事件で死刑が確定していた袴田巌さんの再審を決定し、24年10月、袴田さんの再審無罪が確定した。国会や法務省では再審制度見直しの議論が本格化した。
27日の執行を受け、未執行の確定死刑囚は105人となった。このうち、49人が再審を請求している。鈴木法相は会見で、空白期間が3年近くに及んだ理由について「個々の事案ごとに慎重な判断を行った結果だ」と述べるにとどめた。死刑廃止論への見解を問われると、「凶悪犯罪はいまだに後を絶たない。死刑の廃止は適当ではない」と語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕座間9遺体事件の白石隆浩死刑囚の刑執行について記者会見する鈴木馨祐法相=27日午前、東京・霞が関の法務省
2025年06月28日 07時06分