農林水産省は、随意契約の政府備蓄米について、8月末までとしていた販売期限を延長し、秋以降の販売を容認する。小売業者らが引き渡しを待つ28万トンのうち、10万トン分は、期限内に業者に届けることすらできず、見通しの甘さが露呈した。
政府は小泉進次郎農水相就任直後の5月下旬、随意契約を通じた割安な価格での備蓄米の放出を決定。計50万トンを放出する計画を段階的に公表した。これを受け、スーパーやコンビニ、米穀店などから32万トン分の申し込みがあったが、政府が担った配送作業で遅れが発生。一部の小売業者は8月末までの販売は困難と判断し、4万トン分がキャンセルされ、20日としていた引き渡しの期限内に届けられたのは18万トンにとどまった。
農水省は、備蓄米倉庫からの出庫作業などが想定以上に手間取ったと説明。ある大手小売業者の担当者は「(申し込みの)半分も入ってきていない」と明かす。「出庫がスムーズにいっていれば(8月中に)売れていたと思う」とあきれ顔だ。
当初、販売期限を8月末に設定したのは、新米の需給や価格への影響を不安視する生産者らの声に配慮し、新米が出回り始める前に安価な備蓄米を売り切ろうとしたからだ。ただ、市場では既に全体の放出量を織り込んでコメの価格が形成されており、期限を延長しても産地や品種が単一の「銘柄米」への「影響は限定的」(同省担当者)と見る。
農水省は一連の備蓄米放出の経緯を踏まえ、業界関係者や有識者で、有事も念頭に備蓄米運営の在り方に関する検討会を設置する。小泉農水相は「最大のポイントは、こんなにも備蓄米が世の中に届くには時間がかかるということが明らかになったことだ」と指摘。放出の在り方などの改善に向け、議論を進める考えだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕備蓄米の倉庫を視察する小泉進次郎農林水産相=5月30日、神奈川県内
2025年08月21日 07時03分