
奈良市で2022年、安倍晋三元首相を手製銃で殺害したとして、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判の第2回公判が29日、奈良地裁(田中伸一裁判長)であった。銃撃現場にいた佐藤啓参院議員(46)=官房副長官=が証人として出廷し、「怒りと悲しみが入り交じり、涙を流しながらその場にいた」と述べた。
安倍氏は参院選に出馬した佐藤氏の応援演説中に銃撃を受けた。佐藤氏は当時の状況について「体験したことのないような音が2回した」と話し、1回目の音を聞いて身をかがめ、2回目の銃撃後、地面に倒れた安倍氏に駆け寄ったと述べた。
「(安倍氏は)首の辺りから血を流し、目は開いていたが一見して厳しい状況だろうと思った。意識確認をするために『総理、総理』と大きな声で呼び掛けた」と振り返った。
現場には300~500人の聴衆が集まっていたが、「(多くの人が)力を合わせて何とか救命しようとした」と話した上で、搬送先の病院では昭恵夫人と共に遺体と対面し、「(夫人は)大変憔悴(しょうすい)していた」と語った。
応援のための安倍氏の奈良入りは異例の2度目で、前日に急きょ決まったという。応援演説中に銃撃されたことに「私のせいで安倍先生の命を失ってしまった。自責の念に堪えない」と述べ、「大変申し訳ない」と謝罪した。
山上被告に対しては、「言論を暴力によって封殺する行為で、民主主義に対する冒涜(ぼうとく)だ。許すことはできない」と非難した。同被告は時折目をつむり、表情を変えずに証言に聞き入っていた。
【時事通信社】
〔写真説明〕奈良地裁
2025年10月29日 21時45分