「保守対革新」で摩擦再燃も=歴史問題、違い抑え友好演出―日韓首脳会談



【慶州時事】高市早苗首相は30日、韓国・慶州で李在明大統領との初会談に臨んだ。未来志向で安定的な関係構築を確認するなど友好ムードを演出。ただ、保守派の首相と革新系の李氏は、歴史問題などで立ち位置が異なり、摩擦が再燃するリスクをはらむ。

「とても温かく歓迎してもらい、とても楽しい意見交換をした」。首相は会談後、記者団にこう強調。会談は当初予定の20分を超え40分余りに及んだ。会談で首相は笑顔を絶やさず、李氏と握手を交わした。

首相は、韓国を「重要な隣国」と位置付け、早期の首脳会談に意欲を示してきた。中国が威圧的な動きを強め、北朝鮮とロシアが軍事協力を進める中、「安全保障上の重要なパートナー」(首相周辺)として重視。外交の柱に据える「自由で開かれたインド太平洋」実現には、日韓と米国の3カ国連携の強化が不可欠となる。

折しも、30日は米中首脳会談も開催。外務省幹部は「このタイミングで日韓、日米韓の連携を内外に示す意義は大きい」と強調した。

日韓関係は、元徴用工など歴史問題を背景に一時冷え込んだが、2023年に尹錫悦大統領(当時)が解決策を提示したことを契機に、改善が進んだ。李氏もこの流れを引き継ぎ、首脳同士が行き来する「シャトル外交」が定着した。

首相は、首脳間の信頼関係を築き、改善基調を加速させたい考えだ。21日の就任記者会見では「韓国のりは大好き。コスメも使っている。韓国ドラマも見ている」と親近感をアピール。日本政府筋は、報道各社の世論調査で高市政権の支持率が高いことなどを念頭に「保守と革新の首脳同士だが、互いに国内の支持は盤石だ。うまくいく」と期待を寄せる。

もっとも、両首脳には歴史問題を巡る「持論」が重くのしかかる。

「タカ派」として知られる首相は、靖国神社を毎年参拝。先の秋季例大祭の期間中は、近隣外交への配慮で見送ったが、なお意欲的とされる。与党筋は「今は牙を隠した状態だ」と指摘した。

一方の李氏も、就任前は日本を「敵性国家」と断じ、尹政権の対日姿勢を「屈辱外交」と批判してきた。就任後は「実用主義」を掲げ、融和姿勢に転じたが、支持層には不満も高まっている。

両首脳の政治信条は、今後も火種としてくすぶり続けることになりそうだ。日韓関係が後退すれば、一気に表面化する可能性もある。

【時事通信社】 〔写真説明〕会談前に韓国の李在明大統領(右)と握手する高市早苗首相=30日、韓国・慶州(代表撮影・時事)

2025年10月31日 07時04分


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