
【ワシントン時事】北米3カ国による貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の共同での見直しが2026年7月に初めて行われる。42年までの協定延長を協議するが、トランプ米大統領は離脱を示唆。交渉の行方次第では、生産拠点を北米にシフトしてきた日系企業にも広く影響が及ぶことになる。
「失効させるか、新たな合意を結ぶかだ」。トランプ氏は12月、USMCAからの離脱に言及した。協定が不可欠なメキシコ・カナダに対し、交渉で優位に立つための揺さぶりとみられる。
米政権は25年、両国への圧力を強めてきた。カナダの州政府によるレーガン元米大統領の関税批判の発言を引用した広告にトランプ氏は激怒。貿易交渉の打ち切りを宣言した。メキシコにも追加関税を突き付けている。
トランプ氏が離脱に言及した直後に3カ国は首脳会談を実施。長時間の協議の末、「見直しの広範な基準の設定」(カナダのカーニー首相)には至っている。
ただ、米政権の不満は根強い。メキシコなどを経由して流入する中国製品の排除を進める狙いから、20年の発効で自動車部品の関税免除を受けるための「原産地規則」を強化したが、一層踏み込んだ条件を求めている。
米議会では、他国による投資を国家安全保障上の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)に似た仕組みについて、カナダとメキシコに導入するよう米政府に求める動きも出ている。透明性を向上させる目的だ。
USMCAの下、3カ国の域内貿易は拡大、24年の貿易総額は1兆8000億ドル(約280兆円)規模に上る。自動車関連や機械など幅広い日系企業が、USMCAを利用した対米輸出を理由に北米へ進出してきた。原産地規則の条件変更によっては供給網の見直しが必要となる。仮に米国が離脱すれば関税が復活し、企業への打撃は必至だ。
米国でも多数の企業が延長を望んでおり、交渉を担うグリア米通商代表部(USTR)代表は「協定には幅広い支持が集まっている」と指摘する。だが、「欠点があまりにも多く、問題が解決された場合にのみ更新するつもりだ」とも述べ、あくまで強気の姿勢を崩していない。
【時事通信社】
〔写真説明〕写真右からトランプ米大統領とメキシコのシェインバウム大統領、カナダのカーニー首相=5日、米ワシントン(AFP時事)
2025年12月30日 07時18分