政府、コメ増産方針を撤回=収まらぬ高騰、政策は岐路に



「増産にかじを切る」。石破茂前首相が、事実上の生産調整が続いてきたコメ政策の転換を宣言したのは今年8月だった。しかし、10月に発足した高市政権は増産方針を撤回、従来の「需要に応じた生産」の推進へと軌道修正を図った。鈴木憲和農林水産相は就任以来、「価格にコミット(関与)しない」との立場を貫くものの、コメ価格は最高値を更新し、家計を圧迫。コメ政策は岐路に立たされている。

石破政権の「増産ありき」の考え方に対し、鈴木氏は「私のやり方は、需要を先につくる。海外も含めて需要をちゃんと確保し、そこに向かって増産していく」と違いを説明。海外市場の需要を開拓する前に増産に踏み切れば、「供給過多になり、コメの値段が暴落する」と警戒する。

しかし、石破政権で高騰対策に取り組んだ小泉進次郎前農水相は、「今まで通りの生産調整で米価を維持しようとしても難しいことが分かった」と指摘。気候変動など不確定要素が強まる中、需要を正確に見通す生産調整には限界があるとみている。これに対し鈴木氏は「需要(見通し)の出し方を改善していく」として、コメ需要の見通しを示し、需給を均衡に保つ手法を続ける方針だ。

小泉氏は、わずかな需給変動で市場が混乱しないためには、増産こそが「幅を持って対応できる政策体系」だと強調する。就農人口が減少する中で生産力を維持するため、今から増産のメッセージを発信すべきとも主張した。全国各地の10年後の農地利用方針を集計した「地域計画」によると、農地の3割で将来の担い手が決まっていない。

鈴木氏は、後継者不足の原因を「他の産業に比べて稼げない」ことだと分析する。高市早苗首相も、鈴木氏に「稼げる農業」の実現を指示した。高市氏は「需要がなければどうしようもない」として、政府が率先して輸出も含めたコメ需要を喚起する構えだ。

需給の均衡に終始していては、「縮小均衡の方向性以外ない」(小泉氏)のも事実だ。主食であるコメ生産が次世代の新規就農を呼び込む、稼げる成長産業となれば、結果的に食料安全保障の確保にもつながるが、実現は程遠い。

【時事通信社】

2025年12月27日 19時01分

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