参院で審議入りした再審制度を巡る刑事訴訟法改正案には、開示された証拠の目的外使用を禁じる規定が盛り込まれた。背景には事件関係者のプライバシー保護があるが、捜査・公判を検証する観点から規定削除を求める声も根強い。識者は「参院で規定を見直すべきだ」と訴えている。
改正案は、再審請求者や弁護人は開示証拠を再審手続きやその準備以外の目的で他人に提供してはならないと定めている。違反した場合、1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金が科される。
衆院法務委員会で法務省は、通常の刑事裁判でもプライバシー保護の観点から同様の規定があり、再審請求審に規定がないのは「不均衡だ」と指摘。参考人の上谷さくら弁護士は、証拠には性被害を含む事件当事者の個人情報が多く含まれるとし、「使用を認めるのは絶対反対だ」とした。
裁判員裁判導入に伴い、証拠開示の範囲が広がったことを受け、通常の裁判には2005年11月からこの規定が設けられた。最高裁によると、実際に有罪となった事例は同月から今年3月までに少なくとも6件ある。
初めて起訴されたケースでは、最高裁の警備員に対する公務執行妨害などの罪に問われた男性が、公判中に開示証拠をユーチューブに投稿。投稿動画には警備員の写真や氏名、住所などが記載され、男性を有罪とした判決は「不当な圧力を加える目的があった」と認定した。
一方、傷害致死事件の公判に証拠提出された取り調べの録音・録画映像を弁護人がNHKに提供したのは目的外使用に当たるとして、大阪地検が懲戒請求したことも。大阪弁護士会は14年、目的外使用を認めたが、目的の正当性などから懲戒事由に該当しないと決定した。
こうした実情を受け、メディアや冤罪(えんざい)事件の支援者からは、禁止規定の撤回を求める声が上がる。日本新聞協会は先月27日の声明で、「非公開の再審請求審がさらに不透明になり、国民が問題点を知る機会が損なわれる」と訴えた。
静岡一家4人殺害事件で無罪が確定した袴田巌さん(90)の再審請求審では、開示された血痕付きの衣類のカラー写真を支援者が見たことがきっかけとなり、再審開始につながった。支援者の山崎俊樹さん(72)は「確定記録を直接見ることで『おかしい』と気付くことができる」と語る。
ジャーナリストの江川紹子さんは、犯罪被害者のプライバシーに配慮しつつも、知る権利を確保すべきだと指摘する。「証拠は捜査機関が税金を使って集めた共有の財産。公益目的は除外する例外を設けるなど、参院ではどうすれば現実に即したルールになるか知恵を絞ってほしい」と話した。
【時事通信社】
2026年06月21日 07時18分
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