中東情勢正常化でも残る爪痕=物価高継続へ、貿易赤字拡大も



米国とイランが戦闘終結の覚書に合意したことで、中東情勢を巡る地政学リスクはひとまず後退した。ただ、高値で代替調達した原油やナフサの物価への波及は当面続き、物流網の正常化にも時間がかかる見通しで、日本経済にはなお爪痕が残る。合意後も交渉次第で再び状況が逆戻りする可能性もあり、不透明感は払拭されていない。

中東情勢の影響が本格化する前の2026年1~3月期の実質GDP(国内総生産)は、年率換算で前年比1.8%増とプラス成長を維持した。しかし、ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、原油の価格急騰や調達不安から企業の景況感や消費者心理が急速に悪化。5月の景気ウオッチャー調査では、2~3カ月先の景況感の見通しを示す先行き判断指数が40.7と、好不況の分岐点である50を大きく下回った。

一方、企業物価指数は5月に前年同月比6.3%と大きく上昇。石油・石炭製品や化学製品などに値上げの動きが広がった。同月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は同1.4%の上昇にとどまったが、第一ライフ資産運用経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「企業は原油コストをまだ十分に価格転嫁できておらず、流通の末端に行くほど、しばらく値上げが継続する」と指摘する。

物流正常化への道のりも平たんではない。熊野氏は、ホルムズ海峡の安全確保や機雷除去には一定の時間を要し、タンカーが日本を出発して原油を持ち帰るまでには往復で6週間程度かかるとみる。イランの石油関連施設の復旧も必要で、経済環境は即座に戦闘前の状況には戻らない。5月の貿易収支は3786億円の赤字に転落。米イランの合意で原油先物価格は下落したが、攻撃開始前の水準は上回っており、貿易赤字の拡大が続けば成長率を下押しする。

SMBC日興証券は、中東情勢の長期化が回避されても、4~6月期から7~9月期にかけ「ゼロに近い成長率を余儀なくされる」と予測する。核問題を巡る両国の協議が不調に終わる可能性もあり、軍事的緊張が再燃すればマイナス成長に陥る恐れもある。

【時事通信社】

2026年06月21日 19時01分

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