
高市早苗首相が、来年4月から食料品消費税を1%に引き下げる方針を表明した。消費税は1989年の導入以来、3度の増税を経て今や国税収入全体の3割を占める最大の基幹税となったが、減税は初めてだ。歴史を振り返ると、導入や増税に関わった歴代政権は、選挙惨敗や退陣の憂き目に遭うなど、その命運を左右する「鬼門」となってきた。
◇退陣や断念、封印も
消費税構想を初めて打ち出したのは大平内閣だ。財政再建のため79年に「一般消費税」導入方針を決めたが、世論が猛反発。撤回したものの同年の衆院選で自民党は過半数割れを喫した。中曽根内閣も87年、不人気だった「売上税」構想を断念した。
消費税導入は竹下内閣が89年4月、税率3%で実現したが、支持率は低下。リクルート事件が直撃し、退陣に追い込まれた。94年には細川内閣が消費税に代わる税率7%の「国民福祉税」構想を唐突に発表した。しかし、根回し不足が災いし、わずか1日半で白紙撤回。求心力を失った政権は3カ月後に退陣した。
税率5%への引き上げは橋本内閣で97年4月に実施された。ただ、アジア金融危機や山一証券破綻などが重なる中、増税も景気低迷の一因とみなされ、自民党は翌年の参院選で惨敗。橋本内閣は退陣した。消費税増税はその後タブー視され、高支持率を誇った小泉内閣も増税を封印。2009年の衆院選では、4年間増税しないと宣言した民主党が政権を奪取した。
◇10%へ3党合意
増税が再び争点となったのは翌10年からだ。民主党の菅直人首相が参院選直前、財政再建を理由に税率10%検討を表明。「生煮え」との批判を浴び、選挙に大敗した。続く野田内閣が社会保障と税の一体改革を掲げ、10%まで2段階で上げる法案を国会に提出。野党の自民、公明との3党合意を受け、12年8月に成立した。
しかし、増税に反発した小沢一郎氏ら反主流派が集団離党し、民主党は分裂。窮地に陥った野田佳彦首相は3党合意と引き換えに「近いうちに」と約束した衆院解散に踏み切り、自民党に大敗し、政権から転落した。
12年12月に政権に返り咲いた安倍晋三首相は、予定通りに14年4月に税率を8%に上げた。しかし、増税後に消費低迷を招いたことから、デフレ脱却を優先する安倍氏は15年10月の10%への増税を2度延期。19年10月に食料品に8%の軽減税率を導入した上で、ようやく増税が実現した。
景気動向に左右されず、幅広い世代が負担する消費税は安定した税財源として、年金や医療、介護、少子化対策の社会保障の経費に充てられている。しかし、高齢化の進展で膨らむ経費を賄いきれず、赤字国債の発行で補っているのが現状だ。高市首相は政治の師と仰ぐ安倍氏でさえ、言い出すことのなかった消費税減税を「悲願」として踏み出すことになる。
【時事通信社】
〔写真説明〕消費税導入初日にデパートでネクタイを買う竹下登首相(手前左)=1989年4月1日、東京・日本橋
2026年07月31日 08時09分