
高市早苗首相が5月に植田和男日銀総裁と会談した際、長期金利の上昇を抑えるため、必要に応じて国債を買い入れるよう求めていたことが4日、分かった。金融政策の具体的な手段に首相が言及するのは異例で、日銀の独立性を巡って議論を呼びそうだ。
首相と植田総裁は5月22日に首相官邸で約20分間、会談した。複数の関係者によると、首相はこの場で「内閣の取り組みを理解し、適切な金融政策を実行してほしい」と強調。その上で、日銀が国債の買い入れ額を減らしていることに対して「市場安定のための適切な対応」を求め、必要な場合には国債を買い入れるよう要請した。
これに対し、植田総裁は「市場の反応を考える必要がある」としつつも、「何かあったら対応する」と答えたという。
政府関係者によると、首相が国債に言及したのは「責任ある積極財政」の下で危機管理投資や防衛費増額の財源を手当てするために国債発行の増加が見込まれることから、これに伴う長期金利の上昇を抑えたいとの狙いがある。消費税減税については赤字国債に頼らないとしているが、この財源も決まっていない。
会談から3週間余り後の6月16日、日銀は金融政策決定会合で政策金利を1%に引き上げる一方、国債の買い入れ減額措置を2027年4月以降、停止することを決めた。また、長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に買い入れ額の増額などを実施するという従来の方針を維持した。
この決定について日銀は、首相との会談は関係ないと説明している。ただ、政府関係者は「利上げを認める代わりに、買い入れ計画を修正したと首相側は受け取ったようだ。今後、長期金利が上がれば買い入れ増加を求めるのではないか」と指摘する。
24年3月の大規模緩和終了後、日銀は「金利急騰時には機動的に買い入れる」と言い続けているが、これまでの金利上昇局面で実施した例はない。国の財政事情に合わせる形で再び国債を買い増した場合、中央銀行が政府の財政赤字を補填(ほてん)する「財政ファイナンス」だと市場に見なされる恐れもある。
【時事通信社】
〔写真説明〕高市早苗首相との会談後に記者団の取材に応じる日本銀行の植田和男総裁=5月22日、首相官邸
2026年08月05日 07時32分