
中国自動車メーカーが、電気自動車(EV)で日本へ活路を求めている。背景には、中国自動車市場の成長鈍化や、米国や欧州への輸出で直面する関税障壁がある。EVの普及が遅れている日本だが、日本固有の規格である「軽EV」の分野を突破口に、市場の開拓を目指す動きが出てきた。
「日本は長いスパンでやっていく」。EV最大手、比亜迪(BYD)の劉学亮副総裁は先月28日、日本専用設計の軽EV「RACCO(ラッコ)」の発表会で、シェア獲得に腰を据えて取り組む考えを示した。ラッコの開発では、日産自動車の軽EV「サクラ」の元開発者を責任者に抜てき。ファミリー層に人気の自動スライドドアを採用し、傘立てスペースや保温機能付きのカップホルダーなど装備にも工夫を凝らした。
BYDの2025年の世界販売台数は約460万台。EVでは米テスラを抜き首位に躍り出た。東南アジアや欧州を中心に、台数を伸ばしている。一方、中国での新車販売台数は前年割れの月が続き、成長が鈍化。中国政府が新車販売台数の約5割を占めるEVなど「新エネルギー車」に対する優遇策を縮小したことなどが響いている。
欧米市場への進出は関税障壁がネックとなる。米国は中国製EVへ100%の関税を掛け、欧州連合(EU)も関税率を引き上げ、中国自動車メーカーの参入を食い止める構えだ。関税措置がない日本は相対的に参入障壁が低く、海外メーカーにとって課題とされる販売網の構築では日本の輸入車販売大手などと組んで全国展開を急ぐ。
このほか、中国の自動車大手奇瑞汽車(チェリー)が自動車用品大手オートバックスセブンなどと組んで軽EVを共同開発し、来年にも発売すると発表。高級EVブランド「ジーカー(Zeekr)」も、高価格帯のミニバンEV投入を表明した。
中国自動車メーカーからみた日本市場について、アリックスパートナーズの清水弘之氏は、「EVの普及率は低いものの、米国や欧州と比べ、制限が少なく参入しやすい。『ローリスク・ローリターン』な市場に近い」と分析する。
一方、TNCリサーチアンドコンサルティングの呉明憲氏は、「高品質を求める日本の消費者が中国車を進んで買いにいくとは考えにくい」と指摘。EVの地方での普及へ「販売、メンテナンス網を拡大させられるかも課題だ」と話した。
【時事通信社】
〔写真説明〕中国の電気自動車(EV)最大手、比亜迪(BYD)の軽EV「RACCO(ラッコ)」の発表会に登壇した劉学亮副総裁=7月28日、東京都港区
〔写真説明〕中国の電気自動車(EV)最大手、比亜迪(BYD)の軽EV「RACCO(ラッコ)」の発表会に登壇した俳優の広瀬アリスさん=7月28日、東京都港区
2026年08月11日 07時28分