
【ワシントン時事】トランプ米大統領の2期目就任から20日で1年となる。「タリフマン(関税の男)」を自称するトランプ氏は、戦後の通商秩序を破壊してきた。自由貿易の盟主は「米国第一」の下、孤立主義に突き進んでいる。
「経済的独立宣言だ」。ほぼ全ての貿易相手国・地域に対する「相互関税」を打ち出した昨年4月、トランプ氏は保護主義への傾斜を鮮明にした。
自らを「関税の信奉者」と表し2期目の就任を迎えたトランプ氏。製造業の疲弊、巨額の貿易赤字は、自由貿易体制の下で他国から「搾取されたため」と主張し続ける。
就任後、鉄鋼・アルミニウムや自動車に対する関税など、次々に高関税を発動。貿易交渉では関税を武器にした「ディール(取引)」で米国有利の条件をのませた。
準備不足が指摘された1期目と異なり、米国の高関税は幅広い分野で常態化した。米エール大予算研究所によると、昨年11月の平均実効関税率は16.8%。就任前の2.4%から大きく跳ね上がり、1935年以来、約1世紀ぶりの高水準に達している。
米国は30年以降、大恐慌を受け約2万品目に高関税を課していた。保護主義のまん延が第2次大戦を招いた反省から戦後の自由貿易体制が構築されたが、グリア米通商代表部(USTR)代表は「現在の体制維持は不可能だ」と主張する。
グリア氏は、英北部スコットランド・ターンベリーの会場で締結した欧州連合(EU)との貿易合意が、新たな秩序の基盤になったと指摘。米国による通商秩序を「ターンベリー体制」と称し、戦後の国際経済秩序を支えてきたブレトンウッズ体制や、世界貿易機関(WTO)の下での自由貿易体制に代わるものだと力説してきた。
関税の「力」によって日本を含む貿易相手に譲歩を迫り、WTO交渉では得られなかった他国の市場開放に加え、関税による米国産業の保護と巨額投資を勝ち取ったと誇っている。
保護主義に走る米国だが、行き過ぎた関税措置は、転換をしばしば迫られた。対中国では対立回避のため100%超の関税を撤回。相互関税の対象から一部食品も除外した。生活費の高騰が支持離れにつながっているためだ。
さらに相互関税の合法性を巡る訴訟は、下級審が「違法で無効」と判断、連邦最高裁判所が今後判決を下す。元USTR次席代表代行でアジア・ソサエティー政策研究所のウェンディ・カトラー副所長は「今後関税の利用を抑制していく可能性を示唆する兆候も見られている」と分析する。
それでも、強気の姿勢を崩さないトランプ氏の歯止め役は政権内には見当たらない。国際秩序を無視する米国によって、自由貿易は後退が進む。
〔写真説明〕国・地域別の相互関税率の表を掲げるトランプ米大統領=2025年4月、ワシントン(AFP時事)
2026年01月17日 07時16分