転換迫られる戦後通商秩序=内向き欧米、中国が間隙突く―日本、同志国の結集模索



戦後通商秩序が転換期を迎えている。グローバル規模で市場原理に基づく利益最大化を目指す「新自由主義」は、先進国で国内製造業の空洞化をもたらした。反動で欧米は保護主義に傾斜し、先進国間の溝が深まる中、中国は間隙(かんげき)を突いて新興・途上国「グローバルサウス」に接近。資源に乏しく、自由貿易体制の恩恵を受けてきた日本は難しいかじ取りを迫られる。

トランプ米大統領は昨年1月の再登板後、同盟国を含めて世界各国に高関税措置を発動。資源獲得を狙い、デンマーク自治領グリーンランド領有への野心を隠さず、反米姿勢を強めるベネズエラには軍事作戦に踏み切った。欧州は「産業加速法」を発表、欧州議会で審議する。中国依存を脱し産業を強くすることが目的としているが、域内製品優遇の姿勢が色濃い。

日本の経済官庁幹部は「グローバリゼーションが見直され、国家の関与が強まっている」と指摘する。コロナ禍による供給制約や政治的緊張の高まりによる輸出管理の強化により、経済効率を偏重して中国に製造拠点を持つことは大きなリスクであることが露呈。経済安全保障の確保と自由貿易推進の両立が通商戦略上の重要課題となった。

具体的には、現在協議中の米主導の重要鉱物「貿易圏」から世界貿易機関(WTO)まで規模、目的が異なる多様な経済枠組みを重ね合わせる。さらに成長戦略17分野の半導体産業などを育成し、グローバルサウスにも積極展開。双方の経済成長を図る「信頼できるパートナー」づくりを進めるとともに、同志国を結び付け、中国の影響力を抑える道を模索している。

政府は4月、東南アジア各国やオーストラリアとの枠組み「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の拡大会合でこの方針の一端を示した。中東のホルムズ海峡の事実上封鎖で燃料調達に苦しむアジア諸国へ総額100億ドル(約1.6兆円)の支援を打ち出し、「参加国から大歓迎」(赤沢亮正経済産業相)され、エネルギー協力で秋波を送っていた中国の機先も制したと自賛する。

5月に予定される米中首脳会談では、トランプ氏が習近平国家主席に歩み寄らないか警戒感が高まっている。政府は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を「理念を訴える段階から具現化に移す」(経済官庁幹部)ことで、ルールに基づいた自由貿易を支持するまとまりを作り、通商秩序を安定させたい考えだ。

2026年05月03日 07時04分

administration


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