
高市早苗首相は就任後第2弾の「2国間訪問」の目的地として、ベトナムとオーストラリアを選んだ。狙うのはレアアース(希土類)を含む重要鉱物やエネルギーの調達先の多角化だ。資源を巡る供給不安は高市政権の「アキレス腱(けん)」と目されており、政権が抱えるリスクを低減したい思惑も見え隠れする。
首相は昨年10月の就任後、マレーシア、韓国、南アフリカ、米国を訪問。ただ、2国間外交の文脈での訪問は米国だけで、他はいずれも国際会議出席に伴うものだった。首相周辺は「今回の訪問の本題は供給網強化だ」と言い切る。
供給網の目詰まりは政権の「悩みの種」だ。首相は昨年11月、台湾有事が「存立危機事態」になり得ると国会で答弁。中国は猛反発し、レアアースを含む軍民両用品の輸出規制に踏み切った。イランがホルムズ海峡を事実上封鎖すると、石油製品の供給不安も抱え込むことになった。
自民党内からは「供給不足が現実になれば、政権への風向きが変わりかねない」と危惧する声も漏れる。
ベトナムは世界有数のレアアース埋蔵量を誇る。関係を強化すれば「脱中国依存」の進展につながる。豪州も資源国で、日本は液化天然ガス(LNG)の4割、石炭の7割の供給を受ける。「重要物資の調達に重要だ」。首相は1日、出発を前に、両国訪問の意義を記者団にこう強調した。
ベトナムはイラン情勢の悪化を受けて原油調達が困難になり、首相宛てに支援を要請する書簡を送った経緯がある。これも踏まえ、首相はベトナムや豪州と15日にオンラインの首脳会合を開き、原油調達に向けて総額100億ドル(1.6兆円)の金融支援を打ち出した。
首相は2日にハノイ市内の大学で演説し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の進化を提唱する。金融支援についてもその柱と位置付け、改めて説明する考えだ。政府高官は「100億ドルは各国と協力関係を築くための『実弾』だ」と解説した。
【時事通信社】
〔写真説明〕ベトナムとオーストラリアを訪問するため、首相公邸を出る高市早苗首相(中央)=1日午後、東京・永田町
2026年05月01日 20時31分