
日本初の本格的なコンビニチェーン「セブン―イレブン」を築いた鈴木敏文さんが死去した。おにぎりや弁当、おでん、ATM、コピー機など多種多様で高品質な商品、サービスを提供し、米国の「本家」も顔負けの独自のビジネスモデルを確立。社会インフラとして欠かせない存在となり、海外からも熱い注目を集める「日本型コンビニ」の原型をつくり上げた。
物事を進める際には周囲との摩擦を恐れなかった。1973年には社内の反対論を押し切り、米サウスランド社とセブン―イレブンのライセンス契約を締結。単純に米国流のまねをせず、独特の嗅覚で日本に合った商品開発や出店戦略を進め、国内最大のコンビニに成長させた。91年には苦境に陥っていたサウスランド社を買収。厳しい業務改革を断行し、さまざまな慣習を破壊する「ハリケーン」と呼ばれた。
個別の商品ごとに販売状況を把握して売れ筋を予測する「単品管理」を提唱。80年代前半に日本の小売業界では初めてPOS(販売時点情報管理)システムをセブン―イレブンに本格導入し、データ解析と顧客心理を踏まえた売れ筋予測によって収益力を飛躍的に向上させた。
徹底した品質へのこだわりでも知られた。コンビニの主力商品の弁当や総菜は、発売前に自ら試食。冷やし中華のリニューアルの際には11回連続で作り直しを命じ、語り草になった。
2016年には、強引に進めようとした人事を巡り、混乱の責任を取る形でセブン&アイ・ホールディングス(HD)会長を辞任。それでも、イトーヨーカ堂創業家の伊藤順朗セブン&アイHD会長は訃報を受け、「新たな商品・サービスの創造に挑戦し続けた真摯(しんし)な姿勢はグループの大切な源泉だ」とたたえた。
鈴木さんが切り開いたコンビニ業界は今、転換点を迎えている。人口減少で国内市場は成熟し、新規出店の伸び悩みが続く。セブン―イレブン自身も既存店の売り上げ鈍化に直面する中、鈴木さんが築いた基盤をどう次の成長につなげるかが、経営陣に問われている。
〔写真説明〕セブン―イレブン・ジャパンの創業50周年記念式典に出席したセブン&アイ・ホールディングス(HD)の鈴木敏文名誉顧問=2023年4月、東京都港区
2026年05月25日 20時30分