米アンソロピック社が開発した最新人工知能(AI)モデル「クロード・ミュトス」が波紋を呼んでいる。ミュトスをはじめとする最新AIモデルはシステムの脆弱(ぜいじゃく)性を発見する能力が高いとされ、サイバー攻撃に悪用される懸念があるためだ。日本政府や民間企業は対応を急いでいる。
◇AIは「そこにある危機」
「まさに今そこにある危機だ」。片山さつき金融相は4月、日銀や3メガバンクの首脳らと官民連携会議を開催した際、最新AIモデルが金融システムに及ぼす脅威をこう表現した。
ミュトスは米国の一部企業や団体などにアクセス権が限られているが、日本政府や金融機関は月内にアクセス権を確保できる見通し。防御力向上への活用が期待される一方、検出された脆弱性に素早く対応できるかが課題だ。
みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は「これからは脆弱性の嵐になる。迅速に対応する方法を研究しないといけない」と危機感をあらわにする。三井住友フィナンシャルグループはミュトスを念頭にAI専門の社内ワーキンググループを立ち上げるなど、各行が体制の強化に躍起だ。
金融庁と日銀は今月22日、金融機関に対して最新AIの脅威に備えるための対策強化を要請した。優先的に対応するシステムやサービスを事前に特定し、防御できない場合はシステムの能動的停止も「選択肢として検討しておくべきだ」と踏み込んだ。
◇重要インフラにも波及
最新AIがサイバー攻撃に悪用されれば、電力供給の途絶や交通網の寸断につながりかねない。政府は今月18日に関係省庁会議を開き、重要インフラ事業者の防御体制強化に向けた対策パッケージをまとめた。
経済産業省は電力事業者にシステムなどの緊急点検を行い、報告書を提出するよう要請。電気事業連合会の森望会長(関西電力社長)は最新AIモデルについて「非常に脅威と認識している。人材教育も含め、備えを改めて徹底したい」と語った。
JR東海は「新幹線などの運行管理システムは外部から切り離している」としつつ、「サイバー攻撃は高度化するので油断できない」と身構える。日本航空も「リスクと必要な対策の検討を鋭意進めている」と強調した。
IT大手、NTTデータグループの佐々木裕社長は「AIを守りの領域でいかに使っていけるか、企業はしっかり考える必要がある」と訴えた。
【時事通信社】
2026年05月24日 07時03分
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